聖夜に祝福を
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用意出来なかった私にも非はあるし」
「俺は姉さんから貰えれば、そこにどんな意味があれ構わないんだがなあ」
両側面に二つずつ、短い方の辺の部分に一つずつの留め具を外す。大きさの割に軽い蓋を退かして、傷つかないようにと剣を包む紙を外すと、焦げ茶色の鞘に納められた剣が新品らしい光沢を放っていた。柄に手をかけ、そっと引き抜く。
「おお…」
思わず感嘆の声が零れた。
刀身は穢れ一つない白銀。艶やかな灰色の柄の付け根辺りに深い青の石を埋め込んだ細身の剣はクロスが持っている剣の中でも一際美しく、白と青の色合いが姉を連想させた。
「“柊の剣”っていうの」
そう言われてよく見れば、柊の葉のような紋様が刻まれている。
「柊って、十二月二十五日の誕生花なんですって。刀身が白いのは柊の花が白いからで、青いのは…何か、アンタの写真見せたらそれに決まって」
「へえ…ありがとう姉さん、凄く嬉しいよ」
早速別空間に鞘と一緒に送り込んで、姉に駆け寄る。座ったまま体をこちらに向けていた姉と目を合わせて、喜色を溢れさせた声で礼を言えば、姉は小さく俯いた。
「姉さん?」
「…ううん、何でもないわ。来年からは気を付けようって思っただけ」
「気にしなくていいのに、そんなの」
姉から貰えるのなら、そこに死ねと意味が込められていようが構わない。クロスが大事にしているのは姉が贈ろうと思ってくれたという事実であって、そこに誰かが決めた意味があろうと関係ないのだ。贈られるのが剣で、刃物に縁を切るという意味があったとしても、ティアの方にそんな意味を込めたつもりがなければ、それでいい。
「ごめん、姉さん。姉さんへのプレゼント、ギルドに置いてあるんだ。今渡せないんだが…」
「いいわよ、別に。ギルドで貰えばいいだけじゃない。……さ、行きましょ。アイツ等も心配してたっていうし、とっとと安心させてやらないと」
「……ああ、そうだな。きっと兄さんも来てるだろうし」
きっとヴィーテルシア辺りが急いで評議院に連絡している事だろう。今日に備えてナギが寝かしつけているとは聞いているが、どこまで回復している事やら。
「寒っ…雪でも降るんじゃないでしょうね」
「天気予報では晴れだって言っていたから大丈夫だと思うけど…」
「うー…やめてよ、雪とか。これ、買ったばっかりのブーツなんだから」
寒さに耐性がある方とはいえ、十二月下旬の寒さは堪えるらしい。身を震わせたティアは、外気に晒した指先にふうっと息を吹きかけた。どうやら手袋の類は持っていないらしく、今年のプレゼントに手袋を選んだ事は正解だったらしい。密かにガッツポーズする。
「……ん?」
鍵をかけ、さてギルドに行こうとギルドまでの道を振り返った時、家を囲む外壁
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