聖夜に祝福を
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これに関しては本当に申し訳ない。姉の家に行く時は、いつだって姉が好みそうなケーキや焼き菓子を持っていくのに、今日はそんな事は頭からすっぽり抜け落ちていた。
と、がちゃっと鍵を回す音がする。半歩後ろに下がると、こちら側に開いたドアから、その姿が――――。
「……、……姉さんっ」
「え、ちょっ」
視界に入るなり歓喜のあまり抱きしめてしまったが、久しぶりに会う姉は怒らなかった。
「…せめて部屋に入りなさい。暫く甘やかしてやらなかった事には私にも非があるけど、アンタの抱きしめ癖も理解してるけど、玄関先で飛びついてくる事ないでしょうが」
ただ、少し呆れたような声色で背中を軽く叩かれた。
「……悪かったわね、迷惑かけて。ヴィーテルシアから聞いてたわ、アンタが心配してるって」
「俺なら平気だよ。姉さんにも一人の時間は必要だろう?」
リビングに案内されて、真っ先に言われたのはそれだった。お互いに目の前に置かれた紅茶には手を付けない。別にこれは姉の入れた紅茶が不味いとかではなく、単純に二人とも猫舌なだけだ。姉の入れたものなら毒だって飲み干す所存のクロスが手を付けないのはそういう訳である。
「けど、こうして招かれたって事は…考えがまとまったって事かな。聞いても?」
首を傾げて問えば、姉は数度視線を彷徨わせてからぎゅっと唇を噛みしめた。
これは、ここまで来て言うのを拒んでいる訳ではない。どう言えばいいものか、言葉を慎重に選んでいる顔だ。一見するといつも通りのポーカーフェイスだが、伊達に姉だけを追いかけ続けるクロスではない。そのくらいの小さな変化を見落とすなんて有り得なかった。
そして、こうなったらする事は一つ。姉が言い出すのをただ待つ、それだけだ。
「……私」
「うん」
「アンタに剣、贈るでしょう」
暫く待って、ぽつりと零れたのはそんな一言だった。
確かに、姉からの贈り物といえば基本剣ではある。実用的で、性能がよければ細かい事は一先ず考えずに済んで、値は張るが危険でも報酬のいいS級クエストをこなすティアからすれば馬鹿高い訳でもない。大好きな姉から贈られるものなら何だって嬉しいし、それが仕事で使う剣であるなら尚更嬉しいからと、毎年この時期にどんな剣がいいか聞かれるのが楽しみなのだが、それがどうしたというのだろう。
「今年もその予定で、受注も済ませてて」
「…今日までに届かないとか?別に数日遅れても俺は気にしないぞ?」
「そうじゃなくて。もう届いてるし、いい出来なんだけど」
だとしたら何なのだろう。姉の言葉の一つから百を汲み取るのが得意なクロスでさえ、先が見えない。何が言いたいのかが伝わってこない。
「それじゃあ、何に悩んでいるんだ?」
解らないか
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