聖夜に祝福を
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クロスが緩みに緩み切った満面の笑みでヴィーテルシアに詰め寄る。
「姉さん!?姉さんから俺にか!?ああヴィーテルシア経由でも姉さんの言葉が聞けて嬉しいよ姉さん!欲を言えば貴女の女神のような涼やかにして甘く心地よいソプラノボイスをこの耳に流し込みたい……その存在を、そこにいるという事実を脳の隅から隅までに焼き付けたいがっ……!ああでも今姉さんに会ったら頭のてっぺんから爪先までまとめて抱きしめてしまいそうだ…!けど姉さんに会いたい触れたい視界に入れたい抱きしめたい…!そして兄さんも呼んで三人で川の字で寝るというのはどうだろう、昔はよくそうやって昼寝をしたな…懐かしい……今だったら俺が真ん中…いや、それだと兄さんが姉さんから遠いから、姉さんを真ん中にして…川の字ではなくなるがその方が穏便だし俺も嬉しいからそれで行こう!ああけど姉さんに会えるんだろうか、俺はもう嫌われてしまったか…?もうひと月ほど会っていない…声も聞いていない…うっ、思い出したら泣けてきた……姉さん…ぐすっ」
何か捲し立てたと思ったら泣き出した。ここまでどうにか保ってきた(と本人は思っている)「アランの前で情けない姿を晒さない」決まりがあっさり敗れているが知ったこっちゃない。更にいえばウェンディやココロにもしっかり見られているが知ったこっちゃない。シスコンを極めに極めた彼がひと月も姉に会えずにいて、その姉を思って泣き出せばその涙は止まる時を待つ以外にどうしようもないのである。多分。
仮眠室の方から「泣いてるじゃん、クロス泣いてるんだろ…タオル、届けてやんねーと……すぐ使い物にならなくなっちまうし、沢山…」「起き上がるな馬鹿!主はライアーとサルディアに任せておけ!」とのやり取りが聞こえてくるがそれはさておき。
「可哀想に…辛かっただろう」
「ああ、とても辛そうだった」
「お前も、ティアに会いたいだろう?会えてないのはお前も同じだからな」
「ああ…いやいやいや!俺は平気だ、何の問題もない。というか何故そこで俺を出す!?お、俺は別にティアに会えないのは…少し、寂しいが……って何を言わせるんだ!」
「いや、言ったのはお前だろ…」
「自滅してますよライアーさん…」
「そりゃ会えるなら会いたい…っていやいやいや、主に対して従者でしかない俺が何を」などとぶつぶつ頭を抱えて呟き出したライアーから目線を外して、ヴィーテルシアはクロスに目を向ける。
そっと横からサルディアが差し出したタオルで目元を覆いながら時折小さく嗚咽を漏らす姿には心が痛む。彼と同じようにティアを慕う自分が同じ立場に立ったらこうなるだろう、と思うと余計に我が事のように悲しくなってきて、自然と群青の髪を撫ででいた。
「泣くなクロス。ティアからの伝言はお前にとって吉報だ」
「ずびっ…吉報、か?本当に?家族の縁を
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