聖夜に祝福を
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事は従者で片を付けるさ」
「それに、荒れたって割にはここ数日ぐっすり寝られたんですけど…」
「ああ…主の荒れ方は静かだからな。ただひたすら泣いて、声を殺して泣いて、体中の水分が抜けるんじゃないかってレベルで泣くだけだ。スバルはああ見えて面倒見のいい奴だから、主が泣く度に何だかんだ言いながら泣き止むまで傍にいるんだよ」
その様子はなんとなく想像出来た。姉を思い出して泣くクロスと、従者だから仕方なく付き合ってやってる感を出しながらも傍で宥めるスバル。本当にしょうがねえなあ、とか言いながら目が腫れないように濡れタオルを用意したりと世話を焼く姿まで思い浮かんだ。
「クロスさん、泣いてたんですか?」
「フィジックスには情けないところを見せたくないらしくて、そういう時は部屋に籠っていたからな」
「そんな、気にしなくていいのに。だってもうクロスさんの情けないところなら何十回だって見てますよ?」
「……」
あはは、と笑うアランに、ライアーは「主は情けなくないぞ」とは言えなかった。
むしろ「確かにそうだな」と言いかけそうになった。近くにふらふらの主がいるのを思い出して、唇を噛みしめる事でどうにか防いだが。
「クロス!クロスはいるか!?まだ生きているか!?」
そんな、あながち冗談とも笑えない心配の声が叫ばれたのは、ぐったりとしたクロスをライアーとアラン、アルカの三人がかりでどうにか近くの椅子に座らせてすぐの事だった。
ばん、とギルド中にドアを開く音が響き渡る。全員の視線が集中する先、逆光で顔がよく見えないがそれがヴィーテルシアである事は声から判断出来た。いつも通りのすらりとした二十歳前後の青年姿で、顔に汗を滲ませて、軽く上がった息を整えてから汗を手の甲で拭いつつ近づいてくる。
相棒の顔に泥を塗るまいと作り上げた整った顔が、探す相手を見つけた瞬間悲しそうに曇っていく。
「……出遅れだったか…!」
「いや生きてるぞ、勝手に殺すな。主は無事だ」
「だが、どう見ても…」
「今日はティアの誕生日で、自分のせいでこの日を不運にするものかってさっき言っていたから大丈夫だ」
「そうか…よかった、間に合ったようだな」
その判断基準は何なんだ、とアルカとアランは顔を見合わせた。答えは出なかった。
「それで、どうした?慌てていたようだが、何かあったのか?」
「あったも何も。ティアからの伝言を伝えるのに遅れる訳にはいかないだろう」
「何だって!?」
がたたっ、と派手な音を立てて椅子がひっくり返る。だが誰も椅子には目もくれない。
さっきまでのぐったり具合はどこへやら。顔色はいいし目はキラキラを通り越してギラギラに輝くし、頬は興奮のあまり紅潮するわ声は跳ねるわ、兎にも角にも一気に健康体に回復した
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