EX回:第1話<嵐の向こう側>(改2)
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そんなやり取りの隣では、金剛と夕立が憔悴しきった表情で座席に蹲っていた。いつもの二人からは想像も出来ないな。
そのとき突然、機体が持ち上げられた。
……かと思ったら急激に下がる感覚があり激しい振動が機体を襲った。
「ぽいー!」
「うるさいな」
技術参謀が不機嫌そうに呟く。
その態度に私は少し冷や冷やした。
(頼むから参謀の前では皆、良い子で居てくれよな)
「Ohh……」
そんな私の意に反して金剛が怪しい唸り声を上げ始めたときだった。
急に周りが静かになり機体の外が青く明るくなった。
不穏だった金剛も、その雰囲気を感じてキョロキョロしている。
「お姉さま?」
直ぐに比叡が不安そうに近寄る。
「何ネ?」
彼女だけではない。急に別世界に来たような妙な印象を機内の全員が受けた。
窓際に座っていた艦娘たちは、外を覗いている。
「雲の外に出たのか?」
私もまた、近くの窓から外を見ようとした次の瞬間だった。
ドーンという激しい衝撃波に続いて再び機体が激しく揺れる。
機外は再び嵐のように暗くなり機長が何かを叫んでいる。機内の全員が慌てて近くのイスや手すりに掴まった。
静電気のような強い感じのビリビリした電流のようなものが機体全体を覆う。続けて機内にある金属類が帯電してバチバチと音を立て始める。
「ぎえええ!」
金剛の叫び声(日本語)。
「お姉さまぁ!」
比叡の異常な叫び声に私は思わず振り返る。すると、あろうことか金剛姉妹の被り物からも激しく放電が始まっていた。
「セント・エルモス・ファイヤー」
明暗を繰り返す機内で、わけの分からない単語を呟いている夕張さん。
「えぇ? わぁ本当ね、初めて見るわぁ」
これは龍田さん。
この二人は、こういった妙な状況でもビクともしないな。
「キレイ……」
のん気な赤城さん。ビクともしないのは彼女も同様か。
『ギャー』
金剛姉妹は、お互いに指差しあって絶叫している。
被り物から一斉に放電している構図というのは、見方によっては滑稽だ。
しかし本人たちにとっては気持ち悪そうだな。
「あぁ、うるさいな……」
鬼のような形相で言った技術参謀のメガネからも見事な稲妻が出始めている。
「チッ!」
舌打ちすると彼女は、自分のメガネを外そうとした。
「あ痛!」
……そう言った彼女は慌ててメガネから手を離した。予想外に強い電圧のようだ。痺れたのだろうか? しきりに手を振っている。
「ぽ……!」
既に後ろに居る夕立の金髪は、すべて空中に拡散していた。いや、もはやこれは爆発と表現すべきか。案の定、恐怖で声が出ていない彼女。まるで恐怖映画だな。
「…
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