暁 〜小説投稿サイト〜
現代・短編集
『透明なCO2に色がつき』
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
らそうとする。両方とも大自然の内のことです」
「たしかに両方とも大自然の内にある働きだ。そしてある意味一見矛盾している。でも後者の人間が(火力発電などで増える)CO2を減らそうとする戦略はさまざまな理由で失敗することになると仮定すればどうだろうか?」
 ある種のある特定の人間が利益を得るために、(火力発電などで増える)CO2を減らそうとしても、その基盤になっているお金(半ば強制的に庶民に課された)重税やサラリーマンの低賃金化や非正規雇用者の過酷な労働条件といった、命をないがしろにする経済がどこまで持続するだろうか。
 自然は命豊かな世界を望んでいる。けっして不毛の大地なんか望んでいないのだ。いっぽう人間社会は植物を減らして毎年地球を砂漠化している。
「?―」
「地球温暖化白書(注1)を目にしたことあるだろうか?」
 地球温暖化白書も言っている、
「世界の砂漠は毎年六万平方キロメートルものスピードで広がっています。このままいけば、地球上にある陸地すべてが砂漠となるでしょう」と。
「わかります?」とぼく。
砂漠というのは昼と夜の温度差がとても大きい。月も砂漠のようなものだから似ていて、いうならば寒暖の差がとても激しい。そうした過酷な気候はいまの人間社会の異常気象の行き着く果てといったところがある。
 好意的な生徒は言う、
「いやあ、植物はたしかにあると涼しいですもんね。砂漠化を防ぐには増やしたほうがいいでしょうし、地球があったかくなっているというんでしたら、温暖化を考えても、植物は増やしたほうがいいような気がします…」
「うん。CO2は温室効果ガスの一つではあるけれど、適度に地球が暖かくなることは、植物の成長にとってはプラスだとは考えられないだろうか?」
「温暖化も悪くはないということですか?」
「もちろん。CO2が増えることは地球が植物を増やして命豊かな大地を取り戻そうとする表れと考えられるからね。激烈さがなければ」
「激烈さ?」
「そう。逆にやさしいCO2がもたらす緑ゆたかな中での心地よさを想像したらどうだろう。現実の温暖化は、その語句、言葉のニュアンスからかい離し、砂漠が広がり命にかかわる不毛の世界をもたらす激烈なもので、これは苦悩である」
「そういうことですか」
「現にたとえばこのぼくたちの時代の種の絶滅速度は恐竜の絶滅していった時代を上回っている」
「――」
「君たちが『自民党にだけは入れない』というのは意外に健全で目が澄んでいるな」とぼくはつぶやく。
 もっともどの政党を支持して未来を託すかと聞かれれば、それは別の次元の問題である。
 いま政府与党が原発を再稼動したり増やしたりすることは生でヨモギを食べること(注2)だし、化石燃料を使う火力発電所をCO2を理由に減らす必要はない。もともと化石燃料は地球に生き
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ