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現代・短編集
『透明なCO2に色がつき』
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  『透明なCO2に色がつき』


 生徒たちに何気なく、
「もし選挙権があったらどこに入れる?」と聞くと、
次の選挙では、
「自民党には入れない」という。
 意外に嫌われているのだなと思った。
 ついで本題である化学の授業で平衡の話――ルシャトリエの法則の説明である。たとえば圧力が上がったら圧力を下げるという化学平衡の原理(自然の摂理)。
 ぼくは、
「自然はやさしい」というたとえ話で語った。「多すぎれば減らす方向へ、熱すぎれば冷やす方向へと、化学平衡は進む」
 もちろん、化学平衡は人の営みではない。自然の働きである。
 なのでぼくは角度を変えて環境について話した。
「地球温暖化を理由にCO2を減らそうなんて関係ない」というぼくの主張である。
 火力発電はCO2を出すから地球温暖化の悪役として槍玉にあがっている。だからであろう、たいがいはじめてこの話を聞く生徒は意外な説を聞いたという顔をする。二度目のぼくの授業に来てくれている生徒はもう知っている、けれど今回次はどんな話の展開になるのかなって顔だ。
 いま多少CO2が増えているのは、地球が(あるいはもっと大きな力が働いているのかもしれないが)、少なくとも言えるのは、
「自然界が植物を増やそう増やそうという意志のあらわれである」
 世界を見れば、植物を人間があまりにも迫害して減らしているから、地球はバランスをとるためにいま必死になっているのである。たとえば必死になって植物を増やそうとしている。これはルシャトリエの法則と同じ、自然はやさしい、つまりルシャトリエの法則は自然のやさしさを化学平衡という中で語っている。
 懐疑的な生徒が言う、
「ルシャトリエの法則は人間の作ったものではないのですか?」
 ぼくは言う、
「人間も自然の一部、その営みは大自然の内にある。分かってくれただろうか?」
「はい」
「CO2が増えることは、温暖化が進むことではなく、植物を増やすことと考えればよいのだ」
 植物が増えれば涼しくなる。夏の木陰を思い浮かべてほしい。そして植物はCO2 を吸収して酸素を出し、動物たちに食料を提供してくれる。
「だからCO2が増えることは、自然のやさしさの表れ」というぼくの主張なのである。
 好意的な生徒は言う、
「CO2 が増えると植物がよろこぶんですよね」
 ぼくは言う、
「そのとおり。そういうこと」
 懐疑的な生徒は言う、
「気になったんですが。人間も自然の一部、その営みは大自然の内にあるということですが、地球温暖化を理由に(火力発電などで増える)CO2を減らそうとする人間の戦略も大自然の内にあるということではないんですか?」
「そのとおり」
「矛盾していませんか。そうだとすると、大自然はCO2を増やそうとするいっぽうで同時にCO2を減
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