巻ノ六十七 関白秀次その六
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「しかしな」
「しかしとは」
「豊臣家のことは知っていよう」
秀吉と彼の家のことはというのだ。
「我等のことは」
「武士かといいますと」
「我等は元は違う」
言うのはこのことだった。
「元々は百姓、しがないな」
「だからですか」
「そうじゃ、武士ではない」
その出自はというのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「うむ、武士といっても俄じゃ」
そうした家だというのだ。
「所詮はな、しかしそのわしでもな」
「関白様もといいますと」
「武士になれるか」
こう幸村に問うのだった。
「わしもな」
「百姓の生まれでもですか」
「わしも今でこそ関白じゃが」
己のことも言う秀次だった。
「幼い頃は何でもない、貧しい中におった」
「百姓として」
「そんな者じゃ」
所詮はというのだった、自分自身のことを。
「刀を持っておってもな」
「その関白様がですか」
「武士になれるか、そして」
「武士として死ねるか」
「それが出来るか」
こう幸村に問うのだった。
「御主はどう思うか」
「武士とはです」
幸村は一旦間を置いた、そのうえで。
あらためてだ、秀次に答えたのだった。
「心かと」
「心か」
「生まれも大事でしょうが」
武士としてのそれもだ。
「しかしです」
「心か」
「武士の生まれでも心が備わっていなければ」
「武士ではないか」
「武士の風上にも置けぬという言葉がありますな」
「確かにな」
「そうした言葉もありますし」
「武士に生まれてもか」
秀次は問うた。
「それも代々の」
「それでも心がなければ」
「武士ではないか」
「はい、死ぬ時もです」
「武士の心があればか」
「武士と思います、この者達もです」
ここで十勇士達も見て言った。
「元はです」
「武士ではなかったか」
「今は武士ですが」
身分はというのだ。
「それまではです」
「武士でなかったか」
「多くの者が」
「しかし今ではだな」
「はい、皆武士です」
幸村は秀次に強い声で答えた。
「紛れもなく」
「心としてそうなったか」
「ですから」
「わしもだな」
「武士であり、です」
そしてというのだ。
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