EX回:5 鎮守府の秋祭り〜当日編@〜
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多少の不安を残しつつ、秋祭り当日を迎えた。ポンポンと開催を告げる空砲が鳴り、ワッと来場者が流れ込んでくる。威勢の良い掛け声や雑踏のざわめきが、執務室まで響いてくる。
「さ〜てと、どうすっかなぁ。」
ここの責任者としては、ここを動くべきではない。憲兵さんからの定時報告もあるだろうし、海上警備の艦娘からの連絡もここに入る。しかし、生来の祭り好きな俺はもうウズウズしている。行きたくて行きたくて仕方がない。
「何をそわそわしてるんです?提督。」
大淀がクスクスと笑いながら近寄ってきた。今日はいつものセーラー服を思わせる服ではなく、青を基調とした浴衣を羽織っていた。あの軽巡にしてはバカでかい艤装も背負っていない。
「どうです提督、似合います?」
クルクルと回ってみせる大淀。浴衣の裾が捲れてチラチラと細くて白い脚が隙間から覗く。
「そうさなぁ。普段真面目な委員長が、今日は頑張っておめかししました〜って感じだな。」
俺がニヤリと笑ってそう言った瞬間、顔が真っ赤に染まった大淀の左フックが飛んできたが、仰け反ってかわす。
「ハッハッハ、着なれない服装だから動きが鈍いな、大淀。」
尚も追撃を仕掛けてくる大淀の右ストレートを、左手でキャッチする。女子とは言えど、流石は艦娘。手がビリビリと痺れるが左手の力は弛めない。
「怒るな怒るな、似合ってんだから。」
掴んでいる左の拳を横に退けて、顔をグッと近付ける。ドキッとしたのか、顔を逸らす大淀。やっぱSっ気の強い奴って、強く迫られると弱いんだよなぁ。
「失礼します?……あ、お取り込み中でしたか?」
若い憲兵らしき甚平姿の男が、敬礼して入ってきた。まぁ、男女が触れあいそうな距離で立ってたら、そりゃ気まずいよなぁ。
「いや、構いませんよ。定時報告ですか?」
そこで漸く大淀を解放してやる。少し残念そうな顔してんのは気のせいか?
「はっ。只今開会から2時間経過致しましたが、大きな問題はなく概ね順調であります。」
「ありがとうございます。今から少し席を外すので、連絡事項は私の無線によろしく。」
「了解致しました。では!」
再び敬礼して憲兵さんが戻っていく。
「さてと……大淀!」
「は……はひ?」
「さっきは悪かったな、からかって。お詫びに一緒にお祭り廻るか?」
「は……はい?」
「そうかそうか、なら行こう。」
そう言うや否や、俺は大淀の肩をガッチリと抱くと、そのままの勢いでズリズリと引き摺るように外へと連れ出した。
「えぇ!?ちょ、ちょっと……待ってえええぇぇぇぇ……?」
という、困惑した大淀の叫びを置き去りにして。さぁて、遊ぶぞ〜?
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