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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十二話 決戦、ガイエスブルク(その2)
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官が激しい勢いで攻めてきますが、そういう方ですか? どうも腑に落ちないのですが」

スクリーンには激しい勢いで攻めかかるエーリッヒの艦隊が映っている。その勢いはケンプ、ビッテンフェルト、ファーレンハイトと比べても見劣りしない。そしてその勢いにつられるかのようにミュラー、アイゼナッハも猛然と攻め寄せてくる。

「外見どおりの性格じゃない、むしろかなり烈しい所の有る男ですよ。普段は慎重ですがいざとなれば大博打を打って来る。いや本人は博打とは思っていないのかも知れない、十分に勝算が有って打って来るのでしょうが敵に回せば嫌な相手です」

「なるほど……、となると混戦を狙っているのでしょうか? 或いは左翼の撃滅?」
「……分かりません。多分左翼の攻略を主目的にしていると思うのですが囮の可能性も捨て切れません。本当の狙いは右翼かも知れない……」
「……右翼ですか、考えられる事ですな。確かに敵に回せば嫌な相手です」
ブラウラー大佐が顔を顰めた。

自分で言っていて気付いた。派手に眼を引く敵の右翼の動きは囮かもしれない。真の狙いは左翼を使っての攻撃だ。指揮権を分けたとすればそれが理由だろう。こちらがエーリッヒの動きに振り回された隙を見せた瞬間にメルカッツが一気に攻め寄せる……。ありえない話じゃない、注意を怠るな!

戦術コンピュータのモニターでまた味方の左翼が押されるのが見えた。それを見たガームリヒ中佐が戸惑いがちに
「予備を出すべきでは有りませんか」
と提案してきた。

予備か、味方の予備はフォルゲン伯爵の一個艦隊一万三千隻、ヴァルデック男爵の半個艦隊七千隻、合わせて二万隻が有るだけだ。敵に比べれば圧倒的に少ない。それを今使う?

「今予備を使えば敵が予備を使ってきた時対応できなくなる」
「しかしブラウラー大佐、このままでは味方は後退する一方です」
「後退は当初から予定されていたことだ。敵を引き摺り込んで機を見てガイエスハーケンで一撃を加える。そうだろう?」
言い募るガームリヒ中佐をブラウラー大佐が宥めた。

「それは分かりますが、敵は勢いに乗って攻めてきます。このまま混戦、或いは突破されてはガイエスハーケンを使えません。最悪の場合、味方もろとも敵を撃つ事になりかねません。そんな事になったら……」
「……」

ガームリヒ中佐の言葉にブラウラー大佐が口をつぐんだ。確かに状況は良くない。味方は押され続けている。押されるのは仕方が無いだろう、有る程度は想定の内だ。

問題はガイエスハーケンの射程内に入った時、敵を振り切って逃げる事が出来るかどうかだ。予備を使って多少の余裕を持ちたい、そう思う中佐の気持は分からないでもない。

もし敵味方一緒に撃つ事になった場合、その時から貴族連合は烏合の衆になるのは間違いない。皆生き
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