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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十二話 決戦、ガイエスブルク(その2)
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敵が徐々に近付いてくる。それに伴って艦橋の緊張感が高まる。戦が始まれば多くの兵士たちが死ぬ事になる。だがこの緊張感に耐え続けるのと戦に没頭するのと兵士達にとってはどちらが楽なのだろう。
「敵軍、イエロー・ゾーンを突破しつつあります……」
オペレータの囁くような声にブラウンシュバイク公がゆっくりと右手を上げた。もう直ぐ始まる、おそらく砲手の指は既に発射ボタンの上に置かれ彼らは息をする事すら忘れてその時を待っているだろう。
「敵、射程距離に入りました!」
「撃て!」
悲鳴のようなオペレータの声に公の太く低い声が応えた。そして勢い良く右手が振り下ろされる!
光の束が数百万本、貴族連合軍から敵に向かって放たれた。同時に敵からも同じような光の束が貴族連合軍に襲い掛かる。決戦が始まった。
帝国暦 488年 3月 3日 17:00 ガイエスブルク要塞 アントン・フェルナー
「敵はやはり右翼と左翼で指揮権を分けているのでは有りませんか?」
「かもしれん、だが断定するのはまだ早い」
「しかし、右翼と左翼で余りにも勢いが違いすぎます。それに予備が動きました……」
戦術コンピュータのモニターを見ながらブラウラー大佐とガームリヒ中佐が話している。戦闘が始まってから一時間半が経過した。やはり敵は右翼の攻撃の勢いが強い。
そして予備が動いた。当初中央に居た四個艦隊が二個艦隊ずつそれぞれエーリッヒ、メルカッツ副司令長官の後方に移動している。指揮権をメルカッツ副司令長官と分けていると見るべきなのだろうが、余りにもあからさまな動きだ。罠ではないかという疑いを捨てきれない……。
戦況は良くない。ケンプ、ビッテンフェルト、ファーレンハイト、攻勢に定評の有る男達がその評価に恥じない攻撃をかけて来ている。味方は防戦一方で自陣はあっという間に押されて後退させられた。
敵の右翼が押す、それによって味方の左翼は否応無く後退。そして味方の右翼は敵の右翼、または予備に側面を突かれるのを恐れて左翼が後退するのに合わせて後退、そして敵の左翼が前進する。
戦闘が始まってからの彼我の戦闘状況だ。混戦状態になっていない事、潰走していない事が救いだが他に明るい材料は無い。おかげで司令室の空気は嫌になるほど重苦しい。
二人の少女も肩を寄せ合い怯え切った表情でスクリーンを見詰めている。泣き出さないのが救いだ。この上泣かれたら士気はガタ落ちだろう。何処かに移って貰うかとも考えたが、それも危険で出来ない。何処かの馬鹿が二人を攫って利用しようとするかもしれないのだ。目の届くところにいて貰う必要がある。
「フェルナー准将」
ブラウラー大佐の声に視線を向けると戸惑いがちに問いかけてきた。
「ヴァレンシュタイン司令長
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