第41話『予兆』
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…いつ走り出す?」
「そうだね・・・」
晴登の提案に、ユヅキは納得したような表情を見せて考え始める。
晴登自身、この案は中々の物だと思った。
『何らかの方法』でウォルエナの注意を引き、その隙に“追い風”を使って王都に走って逃げる。
幸い、ウォルエナの位置は王都側の反対、今通ってきた道上だ。『立ち塞がれているから、避けて通らなければならない』だなんて面倒な条件は存在しない。
しかし問題は『何らかの方法』だ。
奴に背を向けて走る以上、襲い掛かってくるのは必然。
だから数秒間でも奴の気を、できれば奴の後ろに引き付けて時間を稼ぎたい。
「だったら、この場合『気を引く』のが鉄板だな。とりあえず石でも投げて・・・」
「でもそれって相手に見られてたら意味ないんじゃ…」
「うわ、ホントだ」
自分の持つ知識を生かそうとするも、それが無意味だと気づかされる。
あのウォルエナの標的は、どう考えても自分ら2人。
下手に石っころを放ると、気を引くどころか反感を買って襲ってくるかもしれない。
「ボクが氷を放つ…っていうのも同じだよね」
「だったらいっそのこと、石投げてみるか」
晴登は身近に落ちてた小石を手に取る。さすがにサイズが小さいかと思ったが、充分だろう。
ウォルエナとの距離は約5m。目標はその向こう側。難しくはない距離だ。
「じゃあ…いくよ」
「うん」
ユヅキの返事と共に、晴登は腕を振るった。さすがは小石、あまりに軽くて加減ができない。
とはいえ、空中に放物線を描き、予定の地点よりも遥か遠くに落下・・・
「ガウッ!?」
「「あ」」
・・・すると思っていた。
晴登とユヅキは同時に声を上げ、顔を見合わす。
晴登は申し訳なさそうに苦笑し、ユヅキはその顔をジト目で見返す。
そう、その怒りはごもっとも。
晴登自身も「やっちまった」と感じていた。
──着弾地点が“ウォルエナの額”だなんて、運命様は非情すぎる。
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