第41話『予兆』
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のは、今まで歩いてきた道のりだけだ。
では、今の音は何なのか。風の仕業だと言うこともできるが、今回は2人ともそれは違うとわかった。
森に流れる不穏な気配。そして怪しげに動いた草木。
これらを照らし合わせると、あの音の正体は想像に難くない。
「何か、いる…」
そう口にすると、緊張感が体を支配する。
少なくとも、あの草むらの向こうには動物がいるのだ。無害な奴か、あるいは…危険な奴か。
もちろん、前者で済むのに越したことはない。猫とか狸とかが出てきて和むのもアリだ。
だが今この森は、ユヅキ曰くであるが『おかしい』らしい。
であれば、レアな動物との邂逅を満喫するなんてことは起こり得ないだろう。
ガサッ
さっきよりも音が大きくなる。…それの存在が近付いている証拠だ。
2人は身構え、それの登場を待つ。
ガササッ!
「「っ!」」
それが姿を現した途端、2人は冷や汗を垂らす。
目の前に出現したのは、一言で言って『獣』だった。
見た目は端的に言うと狼に近い。が、何でも切り裂けるであろう鋭く尖った犬歯や爪は、晴登の知るそれより遥かに危険だと思われる。
その獣は口の端から涎を垂らしながら、紅く輝く敵意に染まった瞳をこちらに向けていた。
…間違いない。ハズレである。
「ゆ、ユヅキ、あれは…?」
「…ウォルエナだよ。昨日話した」
いきなりの危機に晴登は怯えるが、ユヅキは意外にも冷静だった。もしかしたら、森が変だと勘ぐった時点でこれくらいの予想ができてたのかもしれない。
だが、それは今気にすべき事柄ではない。
明らかな敵意・・・もとい、殺意。
それを向けられるのが初体験でないというのを、晴登は頭の奥で理解していた。
「あの時以来…だぜ」
目の前の存在の実態を知って、さらに足がすくむ。絶対的な恐怖。それをひしひしと感じつつ、過去を思い起こす。
正直、あの時の『熊』の殺意は忘れられない。
それなりに怪我だってして、言ってしまえばトラウマもんだ。
だから、その経験だけで恐怖に慣れるなんてことはまずない。
目の前にいるのは…あの『熊』と同類だ。
「グルル…!」
ウォルエナが唸る。素人目でも、その行動は威嚇なのだとわかった。
加えて溢れんばかりの殺意。危険…過ぎるだろ。
「ユヅキ…どうする?」
晴登は打開策を見つけるため、自分よりは土地勘が良いユヅキの知恵を借りることにする。
こいつと戦うのは最悪の最終手段。まずは逃げる算段を整えなければ。
「簡単な話、王都まで走っていくのが最善かな。単純に足の速さじゃ負けるだろうけど」
「それは俺の魔術でカバーできるよ。だから
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