第四章
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「実際に」
「ああ、安心しろ」
「夏が終わったら元気になるわ」
両親の返事はわかっているものだった。
「だからな」
「その時もお願いね」
「うん」
梨帆は両親の言葉にも頷いた、素直な性格も影響して。
そうして夏休みは塾と宿題と友達との遊びとエグゼイドの散歩で過ごした。やがて二学期がはじまり秋になるとだ。
エグゼイドは次第に元気になってきた、よく犬小屋から出て家族が来ると応えてくれた。大人しく愛嬌がありしかも知らない人が来るとすぐに吠えるいい犬だった。
そのエグゼイドを見てだ、梨帆はまた言った。
「本当に涼しくなったら元気になったわ」
「それが犬だ」
また幸平が梨帆に答えた。
「寒い方が好きだ」
「そうなの、私寒い方が駄目だけれど」
「犬はそうだ」
こう話すのだった。
「夏休みに話した事情でな」
「そのせいでなのね」
「夏は元気がなくてだ」
「涼しい方がいいのね」
「特に冬だ」
この寒い季節はというのだ。
「元気になる」
「雪とか?」
「歌にもあるな」
「喜び庭にって」
「そうなる、だからな」
それ故にというのだ。
「冬は本当に元気だ」
「そうなのね、じゃあエグゼイド」
梨帆は自分達に顔を向けて尻尾を振っている彼を見下ろして声をかけた。そのつぶらな目はきらきらとしている。
「冬楽しみにしていてね」
「ワン」
梨帆の言葉の意味を知っているのか知らないのかエグゼイドは尻尾を振ったまま応えた、そして二人と共に夕方の散歩に出た。
そして冬になると実際にだ、エグゼイドは夏とは見違える位に活発になった。梨帆は散歩から帰って今もボディーガードをしていた幸平に言った。朝早くの散歩だったが。
「いや、今朝凄く寒かったのに」
言いながら出る息も白い。
「エグゼイド元気だったわね」
「俺の言った通りだな」
「うん、寒いと本当にね」
「犬は元気になる」
「それで夏はなのね」
「あの通りだ」
夏のままにというのだ。
「元気がなくなる」
「そうした生きものなのね」
「そうだ、しかし俺は冬は嫌いだ」
家に帰った幸平は玄関に置いてある水槽を見てぼやいていた。
「どうもな」
「ひょっとして」
「冬眠しているからな」
見れば水槽の中のザリガニは動いていない。その彼を見ての言葉だ。
「冬眠の準備は丹念にしていたがな」
「水温が上がると起きるんじゃ」
「ザリガニは冬はそうさせないといけない」
冬眠、それをというのだ。
「だから気を使ってそうさせている」
「そうなのね」
「しかし、寝たままであまり世話が出来ないからな」
「お兄ちゃん冬は好きじゃないのね」
「ザリガニが冬眠するからな」
「ワンちゃんと逆ね」
「そこはそれぞれだ」
生きも
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