第三章
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「だからだ」
「それでなの」
「人間も夏はあまり動きたくないな」
「暑いからね」
梨帆もそのことはわかった、それで兄の言葉にも頷いた。
「どうしても」
「それと同じだ、むしろだ」
「むしろ?」
「犬は毛に覆われてるし人間よりも体温が高い」
妹にこのことも話した。
「だから人間以上に暑さに弱い」
「そうなの」
「だから散歩も夏は涼しい時間にするべきだ」
「今みたいに」
今は七時だ、梨帆はその時間のことも言った。
「それがいいの」
「夕方は遅い方がいい」
「そうなのね」
「犬のことを考えたらな」
「成程ね、あとね」
今度はエグゼイドが舌を出しているのを見て兄に尋ねた、一緒に歩きながら。
「舌出すのは」
「汗をかいているからだ」
「汗?」
「犬は舌からしか汗をかけない」
「あれっ、そうなの」
「身体は毛に覆われていて汗をかけない」
「けれど舌からは汗をかけて」
歩きつつ今も舌を出しているエグゼイドを見て言う。
「お口から出しているの」
「そうだ、汗をかくと体温が低くなるが」
「ワンちゃんは舌からしかかけないから」
「余計に暑さに弱い」
「そうなのね」
「そうだ、御前も覚えておくんだな」
「わかったわ、けれどお兄ちゃん詳しいわね」
「大学生だからな」
それも実はそれなり以上の、全国的に知られた大学に通っている。
「知っている」
「ザリガニのことだけじゃないのね」
「勉強してきたからな」
「そうなのね」
「御前も勉強しろ、いいな」
「うん、犬のこともね」
ボディーガードとして一緒にいる兄の言葉に頷いた、そうして夏は毎日エグゼイドを朝か夕方には必ず時にはどちらも散歩に連れて行っていた。エグゼイドは自然に家族で梨帆に一番懐いていた。
梨帆はエグゼイドと共に楽しい夏を過ごした、しかしエグゼイドは散歩の時以外は常にだった。
犬小屋の中で寝ていた、それでその彼を見つつ両親に言った。
「暑いからなのね」
「ああ、どうしてもな」
「ああして寝てばかりになるわね」
両親もこう答える。
「散歩の時も大人しいしな」
「夏のワンちゃんはそうしたものよ」
「このことは覚えておくんだ」
「ワンちゃんは夏は苦手なのよ」
「うん、お兄ちゃんに教えてもらったわ」
梨帆は両親に兄のことも出して答えた。
「そうなのね、どうしても」
「体温高いし毛皮着てる様なものでな」
「舌からしか汗かけないしね」
両親も幸平と同じことを話す。
「だからな」
「夏はどうしてもこうなるのよ」
「そうなのね、涼しくなったら元気になるのかしら」
その散歩から帰って御飯と水を飲むとすぐに犬小屋に入って寝たままになって出て来ないエグゼイドを見て言った。
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