1. 玉子焼きと豚汁
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「なんならあたしが一緒に行ってやろうか?」
生まれてこの方まるで縁のない、フォーマルな晩餐会の出席という明日の任務を前に俺が頭を抱えていると、秘書をしてくれている隼鷹があっけらかんとそんなことを口走っていた。まだ昼間でしかも職務中だというのに、隼鷹の目の前の机の上には日本酒の一升瓶とコップが置いてあった。
「え……いや、だって晩餐会だぞ?」
「うん知ってるよ?」
「フォーマルな場なんだぞ?」
「晩餐会って言えばそらぁフォーマルな場だろうねぇ」
「社交界だぞ? 旧華族の人とかもたくさん来るんだぞ?」
「そら晩餐会だもんねぇ」
「お前……大丈夫か?」
「ひどっ」
頬をほんのりと赤く染め不機嫌そうに口をとんがらせながら、隼鷹は目の前のコップになみなみと注がれた日本酒に口をつけ、それをおっさんのようにズズッと音を立ててすすり飲んでいた。俺から見た隼鷹の両目は、とても焦点が定まっているようには見えなかった。
自分がいかに失礼なことを口走っているかは充分承知だ。でも普段の隼鷹を知っている俺はそう思わずにはいられない。考えたくなくても、反射的にこんな失礼な疑問が頭に浮かんでしまう。
初対面の時のことを俺は今もよく覚えている。前任者の提督からこの鎮守府の運営を引き継ぎ、初めて俺がこの鎮守府にやってきた時……すでにここに在籍していた艦娘の中に、こいつはいた。
「あなたが新しく赴任した提督ですね? 榛名です! はじめまして!!」
「「よろしくだクマー」ニャー」
「古鷹です。これからよろしくお願いしますね」
「うーん……むにゃむにゃ……」
「まぁそんなわけで球磨姉多摩姉ともどもよろしくー」
「やせーん!!」
激戦区で日々激しい戦いが繰り広げられているというこの鎮守府において、今も希望を捨てずに明日のために戦い続ける艦娘のみんなの中で、一際異彩を放っているヤツがいた。
「飛鷹です。よろしく」
「商戦改装空母の隼鷹でーす!!」
おしとやかで、ザ・お嬢様という感じの姉と随分違い、えらくテンションの高い女が俺に挨拶してきた。よく見たらほっぺたが赤く、目の焦点が合ってなかった。
「よ、よろしく……」
「ヒャッハァァアアアア!!!」
俺は最初、この妙な女のハイテンションは緊張の裏返しなのかと思っていた。……だがそれは、俺の大いなる勘違いだった。
「……なんか臭うな。酒臭い……」
「だから飲むなって言ったでしょ隼鷹……」
「ダハハハハ……バレちゃーしょうがないねー」
その女……隼鷹は、この真っ昼間から……自分の上官になる俺が初めて鎮守府に来るという一大イベントを前にして、あろうことか日本酒を一升瓶でかっくらっていやがったようだ。ダハハハハハハという下品な笑い声を上げなが
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