1. 玉子焼きと豚汁
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り後片付けと皿洗いが終わった今、俺の目の前には、ある小さな問題が発生している。
「……」
夕食の付け合せとして出した玉子焼きだが……みんなには不評だったようで、全員が大なり小なり玉子焼きを残していた。もったいないと思い食器を洗いながら玉子焼きを別皿に移していたら、最終的にとんでもない量の玉子焼きになっていた。
「どうするんだこれ……」
総勢20余人の分の玉子焼き。一人あたり3切れぐらいずつ切り分けたわけだから、単純計算で60切れ弱の玉子焼きが今、俺の前にそびえ立っている。
「これじゃまるで芋粥だ……いやそこまでヒドくはないか」
悪態をつこうとして、やめる。みんなが残した意味が、俺には分かっているから。
「まぁ仕方ない。……俺が食べるか」
覚悟を決めた俺は、この恐るべき玉子焼きたちをすべて自分で食べる覚悟を決めた。でも、こればっかりは俺の玉子焼きの師匠を恨む。そして、それがすさまじく美味かったからといって、師匠の玉子焼きを忠実に受け継いでしまった自分自身のことも。
……そして、その師匠が鎮守府を去ってまだ間もないうちにこの玉子焼きを作ってしまった、自分のデリカシーのなさにも、俺は落胆していた。
大皿に山のように盛られた玉子焼きを持って食堂に向かった。一切れ一切れは大したこと無い重さでも、それが流石に60切れ弱もあるとかなりヘビーなことになってくる。
「あっとと……」
おまけに大皿の重みもあって、こうやって両手で持って歩いているとフラフラしてしまう。ぶちまけてしまわないよう、俺は慎重に食堂に玉子焼きの山を運んだ。
「あ、提督ー。待ってたよー」
「?」
食堂には、一升瓶をテーブルに置いて一人で晩酌をやっている隼鷹がいた。誰もいないと思っていたからちょっとびっくりして変な声が出そうになったのは秘密だ。テーブルの上には、酒が入ったコップと空のコップの2つが置かれている。
「……部屋に戻ったんじゃないのか?」
「秘書艦だからねー。提督が帰ってこないなら、待つのが任務さ」
そう言いながら隼鷹は、ケタケタと笑ってコップに日本酒を注いでいた。その笑顔のまま、隼鷹の目が俺を見た。
無言で頷く俺。それを受けて隼鷹は、もうひとつの空のコップに少しだけ日本酒を注ぐ。ともすれば綺麗な水晶と見間違う程に透き通ったその酒は、コップに少しだけ注がれ、隼鷹によって俺に差し出された。恐るべき玉子焼きの山をテーブルに置き、俺は向かいの席についてそのコップを受け取る。
「酒の肴が玉子焼きってどうなんだろうな……」
「あんたはあまり酒飲まないから知らないだろうけど、あんたの玉子焼きの師匠は、よくこれで日本酒飲んでたよ?」
「マジか……」
「甘い玉子焼きと日本酒って合
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