暁 〜小説投稿サイト〜
星がこぼれる音を聞いたから
1. 玉子焼きと豚汁
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あたしから言っとくよ?」

 ケタケタと笑いつつ一升瓶からコップに日本酒を注ぎながら、この女はあっけらかんとそんなことを言ってのける。自分が『行く』と言い出したのに、それを他の人に振られるだなんてとても悔しいことだと思うのだが、そこのところは気にならないのだろうか?

「まぁ悔しいっちゃー悔しいけどさ。要は提督が晩餐会でマナーに困ることなくしっかり出来りゃそれでいいんだよあたしゃ」

 随分と殊勝なことを言ってくれる。……そこまで言うのなら、この女に晩餐会での俺の運命を任せてもいいのかもしれない。期待度から言えば飛鷹だが……。でも何も手を打たなきゃマナーで恥をかくのは当たり前。しかも他の子を連れて行ったところで……たとえば球磨を連れて行ってもあいつが淑女的装いをしているところなんか想像出来ないし……きっと誰を連れて行っても同じだ。

 ならば最初に言い出してくれたこの品のなさそうな隼鷹を連れて行くのが筋だ。それにこいつだったら、一緒に恥をかいてもあとできっと楽しい思い出になるだろう。緊張で食事が全く喉を通らなかったのなら、晩餐会が終わったその足で、2人でどこか居酒屋に入ってもいい。

「……そうだなぁ。お前と晩餐会で恥をかくってのも有りかも知れないなぁ」
「おーけい。んじゃーあたしも準備しとくよ」

 俺の一言に対し、別段何の感慨も湧いてない素振りで日本酒をすすりながら、隼鷹はそう答えていた。今はまだ昼間でしかも職務中。にもかかわらず日本酒をかっくらうこの女に文句を言う気が起きないあたり、俺も相当毒されたな……。

「とりあえず隼鷹、コーヒー淹れてくれるか?」
「あいよー」

 すでにアルコールが充分に全身に回っているためか、フラフラとした足取りでコーヒーをドリップで淹れてくれる隼鷹。途端に執務室内にコーヒーのよい香りが漂ってきた。

「あれー……カップが二つに見えるよー……」

 そうつぶやきながらも器用にこぼすことなくコーヒーを淹れ終わった隼鷹は、ケタケタと笑いながら俺にコーヒーが入ったカップを一つ持ってきてくれた。

「お前は?」
「あたしは日本酒あっからねー……」

 コーヒーと酒を同列に語るか……まあいい。キチンと仕事さえしてくれれば……そう思い一時間前に隼鷹に渡した書類の束を見ると、ほとんど処理が終わってなかった。

「おいおい……百歩譲って酒は許すとしても、キチンと仕事はしてくれ」
「タハハ……まぁ今日が終わるまでにはやっておきますよ提督どのー」

 まったく……いい加減真面目に仕事をしている姿も見せて欲しい……不満を心に抱えながら隼鷹のコーヒーを片手に俺は仕事を再開した。

 そうして暫くの間、2人で静かに書類を片付けていった後、時計を見る。午後4時。そろそろ夕食の準備に入っ
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