暁 〜小説投稿サイト〜
星がこぼれる音を聞いたから
1. 玉子焼きと豚汁
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ら背中から一升瓶を引っ張り出してくるこの隼鷹という女に対し、俺は最初いいイメージを持たなかった。

「コラ隼鷹! 提督の前でラッパ飲みはやめなさいよ!」
「げふぉ……くはぁぁぁぁぁ……染みるねぇ……どお? 提督も飲む?」

 なんせこの女……飲酒がバレたことを悪いとは思わず、これで気兼ねなしに飲めるとばかりに俺の目の前で一升瓶をラッパ飲みし始めやがったからだ。俺もそう長くない人生の中でそれなりの数の女性は見てきたが、こんなに悪目立ちする女ははじめてだった。

「ダハハハハハハハ!!!」

 その後の鎮守府運営の中で隼鷹のイメージはある程度改善されていったのだが……少なくとも『上品ではない女』という評価が俺の中で揺らいだことはない。この隼鷹という女は上品とはかけ離れた存在……俺が抱く社交界のイメージとは最も遠いところで生きている女という印象だった。

 言ってみれば、ワイングラスよりはワンカップの日本酒。本格フランス料理よりは場末のラーメン屋でラーメンとチャーハン……悪く言えば品がない……でも良く言えば親しみやすい……そんなイメージを俺は隼鷹に抱いていた。

 だから俺は、隼鷹が晩餐会の随伴を誰にするか頭を抱えている俺に対して『あたしが一緒に行ってやろうか?』と言い出したことは予想外だった。予想外というか……ある意味では憤りにも近い感覚だった。

「いやお前……テーブルマナーとか知ってるのか? 大丈夫か?」
「大丈夫に決まってんじゃん。むしろ提督は大丈夫なの?」

 自慢じゃないが、生まれてこの方テーブルマナーが必要になった事がない。一応士官学校でその辺も叩きこまれてはいるが……それからもうだいぶ時間も経ってるし、その後もずっと戦闘続きでせっかく学んだテーブルマナーを活用する場なんてなかったから。

 だから隼鷹のこの指摘は、悔しいが的を射ていた。隼鷹が社交界のマナーを熟知しているかどうかは知らない。知らないが、少なくとも俺はマナーに関してはもうあやふやな知識しかない。俺はマナーから遠くかけ離れた世界で下品な笑い声を上げて生きているはずのこの隼鷹の指摘に対し、自信を持って『大丈夫に決まってる』と言うことが出来なかった。

「……いや」
「だと思ったよ」
「お前こそ俺に偉そうにそんなこと言ってるけど大丈夫なのか?」
「あたしゃ元々豪華客船の橿原丸だよ?」

 うーん……なんたか説得力があるような無いような……そもそもお嬢様度合いでいえばお前より飛鷹の方が……という言葉が喉まででかかったが、それはなんとかこらえることが出来た。

「まぁ飛鷹でもいいんだけどさ。飛鷹も元は豪華客船の出雲丸だし」
「せっかく俺が我慢した言葉をお前が口走ってどうする……」
「提督どうする? あたしでもいいし、飛鷹の方がいいなら
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