第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#28
FUTURE’S MEMORYW〜Diamond Over Drive〜
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った。でも、最後の最後、ようやく気づく事が出来た。
“自分が何も失っていなかった” というコトを。
『……奇妙な安らぎの中に……私は……いる……
もう……微塵の後悔も、無念もない……
我が主の元へ……旅立とう……
この最後の戦いを……誇りとして……』
これでもう、二度と瞳が開く事はないだろう。
遺恨に縛られた魂は、解放される。
そして、現世でも紅世でもない、 『別の場所』 へ。
閉じた瞳に、アイツ等が浮かんだ。
その中心に、アノ方がいた。
何よりも大切な、一人の少女を、傍らに。
『最後の相手が、御前で良かった……
己が存在を、完 うする事が出来た……
感謝、するぞ……ジョセフ……ジョー……スター……』
「同じ、だよ……アンタがいたから、
『アイツ』 に逢えた……」
気流に散っていく、巨竜の亡骸を、ジョセフは穏やかな瞳でみつめていた。
敵であるイルヤンカは、もう敵ではなかった。
死に逝く戦友を看取るように、孤独ではないように、言葉をかけ続けた。
これもまた 『運命』
一人は過去との決着を、もう一人は未来への決意を、
それぞれ掴み取る為に “出逢うべくして出逢った”
「……で、よぉ、ハッタリで上手くワムウをハメたまでは良かったんだが、
その後毒入りのリングを心臓に埋め込まれちまってな、しかも二つ!
あんときゃあ本当にビビったぜ。
手術でも取り出せねぇって言うしよぉ〜。
……なぁ? まだ、聞こえてるか?」
本当に、甘い男だ。
敗れた敵の事まで、想い遣るとは。
こんな甘い男、弱卒のフレイムヘイズにもいない。
でも、だからこそ。
『…………私……は…………御前に…………逢う…………ために…………
よみが…………えっ…………た…………の…………かも…………
しれ…………ぬ……………………』
囁きよりも小さい、巨竜の声。
でもジョセフに耳には、確かに届いた。
死して尚、己が矜持を貫こうとした、誇り高き男の声が。
「イルヤンカ?」
『さら…………ば…………だ…………
ジョ………………ジョ…………………』
零れた名前と同時に、イルヤンカの存在は一斉に散華した。
煌めきを伴って天に昇る、鈍色の炎。
アレほどの存在が嘘のように、脆く儚く、散っていく。
後に残るは、寂滅の風。
一人の男の死を、冷たい風だけが静かに悼む。
「……」
“アノ時” と同様、立ち上がったジョセフが無意識にとっていたのは、
「敬礼」 の姿であった。
涙は流さなかったが、無言の男の詩があった、奇妙な友情があった。
二つの世界が折り重なる、 『運命』 の中で。
紅世の王 “甲鉄竜” イルヤンカ
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