先恋〜過去〜
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「…ゴメンね、瑞木さん…いや、沙奈さん」
「…え?」
「もう離れないって、約束するから」
「本当…?本当に??」
「うん…______。」
沙奈は目を開く。幸せな夢の筈なのに、涙が溢れている。それを拭い、周りを見て、気付く。
「…陸太…くん…?」
陸太は、居ない。沙奈はたちあがり、辺りを見渡す。
「…陸太く…__」
首の重みに気付き、そっと手を当てると…ペンダントが二つ。陸太は、自分一人、沙奈を巻き込む事なく、別れることを決めたのだ…。其れに沙奈は気付いた。これは陸太が下した決断で、沙奈は其れを泣きながらでも受け入れなければいけないのだと__。
「…馬鹿…ズルいよ…。」
沙奈はそう言い、そっと歩き出した。
「何をしてたんだ??????」
陸太が家に帰ると、父母が血相を変えて立っていた。また、父に殴られるんだ…陸太はそう考え、父の顔を見た。
「…殴る?」
「…あ?何……」
「僕の頬、また殴るの?」
陸太の目には、恐怖も何も無かった。全てを捨てて来たかのような目だった。父母も、其れを察した。陸太は以前の陸太では無い。全てを捨てて、抜け殻になってしまったのだと。
「…陸君…」
母が泣いた。陸太を抱き締め、泣いた。
「ゴメンね、陸君………陸太、陸太…」
陸太は何も言わなかった。涙も出なかった。其れでも、母の背をそっと撫でる事は出来た。ただ黙って、母の背を撫でた__。
「…あのね、陸君に相談があるの」
「?何、」
その後、陸太は泣き止んだ母と、父に部屋に呼ばれ、母の相談事を聞くことになった。
「…その、ね、まだちゃんと決めたわけじゃ無いし、陸君の気持ちが一番だから…あれなんだけど…、陸君が其れがいいって思うなら…その…ひ、引越しを…しようかと思ってるんだけど…」
陸太はその言葉に、流石に少し驚いた。二人は
引越しまで考えていた。勿論、陸太の為だ。
「…別に、どっちでも良いよ…」
「…うん…まぁ、少し考える時間はいると思うから、よく考えてみて」
其れで話は終わった。陸太は何も言わず、部屋に戻った。
「…完全に会えなくなるべきなのか…其れとも…、ただの教師と生徒として、顔をあわせる可能性ぐらいあったほうが良いのか…」
陸太は布団に潜り、そう呟いた。答えなど、出なかった。陸太は、父母に、「好きにしてくれ」と伝えた。そして、陸太の引っ越しが決まった。
「ねぇ、母さん、」
「ん?何?陸君」
「…引っ越すなら…住みたい場所があるんだけど…良いかな?」
「…?」
陸太はあの場所を選んだ。近くに公園が見えるあの場所。
「でも…あそこ、昔住んでたでしょ?何か…陸君が高校生のお姉ちゃんと仲良くなったって喜んでた頃まで。」
「うん、あそこが良いんだ。」
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