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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十一話 決戦、ガイエスブルク(その1)
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帝国暦 488年 3月 2日 帝国軍総旗艦 ロキ コルネリアス・ルッツ
ヴァレンシュタイン司令長官から各艦隊司令官に総旗艦ロキへの集合が命じられた。前回総旗艦ロキの会議室に集合してから十日程しか経っていない。今回も同じ会議室に同じような並び順で皆が座った。
「思ったより貴族達は慎重だな。もっと簡単に暴発するかと思ったのだが……」
メックリンガー提督の言葉に彼方此方から同意する声が上がった。
「司令長官の挑発は結構辛辣なものだと思ったのだがな」
「結構辛辣? 冗談は止せ、クレメンツ。バラ園の世話係のくだりに私は飲んでいたコーヒーを吹き出したぞ」
メックリンガー提督の言葉に会議室に笑い声が湧いた。皆顔を見合わせ笑っている。メルカッツ副司令長官も常の謹厳さを何処かに置き忘れたかのように顔を綻ばせていた。
「しかし司令長官は余り出来は良くないと不満だったようですよ」
「本当か? ルッツ提督。信じられんな」
ビッテンフェルト提督が疑わしげな表情で問いかけてきた。何人か頷いている姿がある。まあ気持は分からんでもない。俺も最初聞いたときは信じられなかった。
「本当だ、ビッテンフェルト提督。リューネブルク中将から聞いたから間違いないだろう。通信を終えた後はかなり憮然としてリューネブルク中将にやってもらえば良かったと言っていたそうだ」
俺の言葉に皆が顔を見合わせ、また笑い出した。あれだけ辛辣な通信をした後で納得できずに憮然としているヴァレンシュタイン司令長官を思い浮かべたのだろう。
「やれやれだな。門閥貴族達はあの通信を聞いてどんな顔をしたのやら」
「さぞかし怒り狂っただろうさ。だがそれを抑えたのだ、連中、油断は出来ん」
ロイエンタール提督の問いにミッターマイヤー提督が答えた。彼の口調には苦味がある。挑発行為が上手くいかなかった事で忸怩たるものがあるのだ。皆もそれを感じ取ったのだろう、笑いを収めた。
「引き摺りだす事が出来んという事は力攻めという事か」
「そうなるな、貴族連合と乾坤一擲の戦を行う事になる」
「面白くないな、敵の狙いどおりという事だろう」
ケンプ提督とレンネンカンプ提督が表情を曇らせている。全く同感だ、事態は面白くない方向に進んでいる。
昨日、挑発行為が思うように効果を上げていないと思った司令長官はミッターマイヤー提督と共に自ら出撃した。俺達は皆危険だと止めたのだが、司令長官は“一人ではない、ミッターマイヤー提督も一緒だから大丈夫だ”と笑って取り合わなかった。
おそらく司令長官は挑発行為が上手く行かず面目を失ったと感じているミッターマイヤー提督を気遣ったのだろう。あれはミッターマイヤー提督の責任ではない。その事は皆が分かっている。俺がやっても同じ結果だったはずだ。
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