第十三章
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「以後お見知りおきを」
「御主も魔術師か」
「いえ、私は占術師です」
速水は微笑み騎士に答えた。
「そちらと依頼されたお仕事で生計を立てています」
「そう言うのか」
「はい、そして今のお仕事は」
依頼されたそれはというと。
「そちらの想い人と同じものです」
「二人共か」
「そうなります」
「わかった、二人一度に相手をしよう」
「それでは今から」
「そうするとするか」
こう応えてだ、騎士は沙耶香だけでなく速水とも戦おうとした。だがだった。
不意に騎士は動きを止めた、そうして二人に言った。
「申し訳ないが去らせてもらう」
「急用かしら」
「いや、時が来たのだ」
「時が」
「そうだ、余は帰る」
そうするというのだ。
「余が帰るべき場所にな」
「その時間になったというのね」
「そういうことだ、ではまた会おう」
騎士は沙耶香と速水に別れの言葉を告げた。
「もっともそなた達が戦いたいというのなら次の一撃で終わらせるが」
「生憎その一撃で終わることはないわ」
「私もそう思います」
沙耶香だけでなく速水も騎士に答えた。
「必ず防いでみせるから」
「戦いを続けられるのならすぐには終わりません」
「そう言うか、ではその一撃は次の機会に取っておく」
二人の言葉に出ている自信に実力の裏付けを見たのか騎士は考えをあらためてそのうえで二人に答えた。
「また会おう、そして女よ」
「私の罪はというのね」
「次の時に断罪する、しかし余とここまで戦えた者はそうはいない」
「そのことを褒めてくれるのかしら」
「そうだ、見事だ」
実際にだ、騎士は沙耶香に賛辞の言葉を送った。
「道を誤らなければよかったのだが」
「生憎正しい道を歩むことは嫌いよ」
沙耶香は騎士の今の言葉には悠然とした笑みで言葉を返した。
「私は夜の世界にいる魔術師だから」
「それ故にか」
「正しい道には興味がないわ」
「夜の道に興味があるのか」
「正しいかそうでないかは私にはどうでもいいこと」
この考えを騎士に話した。
「それが魅力的で快楽があるかどうかよ」
「堕落の道か」
「堕落。結構なことね」
この言葉もだ、沙耶香は妖しい笑みで肯定してみせた。そこには何の疚しい気持ちもなく心から受け入れているものだった。
「それもまたね」
「愚かな。禁欲と節制こそが神の御教えだというのに」
「何度も言うけれど私は神の僕ではないわ」
即ちキリスト教徒ではないというのだ、沙耶香はそこは強調した。
「そのことはわかってもらうわ」
「異教の者か。この街には多い様だがな」
「生憎最早宗教が違うことは罪にはなりませんので」
騎士にだ、速水も告げた。
「そのことはご了承下さい」
「異教の者を成敗するなというの
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