第二十三話 野心その三
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「けれど」
「それでもですね」
「問題はそれがロートリンゲン家の主導で行われる」
「それが問題ですね」
「ロートリンゲン家が行うことが」
「それが」
「そうよ、エヴァンズ家はエヴァンズ家よ」
マリアの家でもある、言うまでもなく。
「それならば」
「何があろうとも」
「必ず、ですね」
「ロートリンゲン家の手には渡さない」
「四国全てを」
「そうしないといけないわ、何とかしたいけれど」
それでもと言うマリアだった。
「それはね」
「難しいですね」
「マリー王女はお気付きでしょうが」
「ロートリンゲン家の力は強いです」
「権勢も資金もあります」
「何もかもが」
「このままでは」
まさにというのだ。
「マイラ姉様のお子が王となることも」
「ありますね」
「男子の方がおられないですし」
今のエヴァンズ家にはだ。
「若しマイラ様にお子が生まれれば」
「その方がです」
「王となられます」
「まさに」
「そうなることは充分にあります」
「そうなれば」
本当にと言うのだった。
「どうしようもないわ、けれどこのことは」
「今は」
「どうしようもありません」
「神のみぞです」
「神のみぞ出来ることです」
「神があの国をエヴァンズ家のものとされるなら」
それならばというのだ。
「マイラ姉様は」
「道具となりますね」
側近の一人が言った。
「エヴァンズ家の為の」
「子供を産む」
「太子は毎夜あの方と共におられるとのことですし」
「エヴァンズ家の常ね」
「婚姻によりその国を自分達のものとしていく」
「戦争ではなく」
「あの国は戦いより遥かに素晴らしいものを見付けたのです」
それが婚姻なのだ。
「以前から多くの家が行ってきたことですが」
「私もセーラも然り」
マリアは自分のことも言った。
「我がエヴァンズ家もしていたし」
「今もですね」
「この通りね」
行っているというのだ。
だがそれと共にだ、マリアはこうも言った。
「けれどあの家は」
「普通の婚姻はそれぞれの家の結びつきを深め」
「同盟とするのに対して」
「あの国はそこからです」
「相手の国を手に入れる」
「そうしてきました」
他の継承者が急死、若しくは失脚したり政略でエヴァンズ家の血を引く者を継承者にしてしまってきたのである。
「ですから」
「マイラ姉様も」
「道具です」
「姉様ならば」
マイラもまたマリーと同じく聡明であることからだ、マリアは言った。
「それにお気付きの筈」
「そうでしょう、ですが」
「それでいて」
「太子は常にお傍にいるのです」
例えマイラをエヴァンズ家の為の道具と考えていてもだ。
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