鼠に好かれるアラサーの私
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
キリトも起きているだろうし、身支度をしようと脱衣所にに行き、洗面台についてある蛇口を捻り、緩やかな勢いで出ている水を両手で受け止め、顔を洗う。まあ顔なんて洗わなくとも、そもそも汚れや油なんて分泌しないんだし、特に気にしなくてもいいのだが、しかし爽快感がなぁ……と、思い耽っていると、扉をノックする音が聞こえ、
『ティグ、起きてるか?』
と、私を呼ぶ声が届いた。声の発生源は間違いなくキリトである。
「ああ、今行く」
そう返事をした私は、寝間着替わりの男物のYシャツから白のインナーと女物のYシャツに着替え、袖を肘まで捲くり、そして部屋の扉を開けた。
「おはようキリト」
「ああ、おはよう」
挨拶を交わし、宿を出た。キリトに食べ物はこの世界にあるのか聞いたら、一応あるそうなので、その食べ物が売っている店に行く事にした。
さて、今私が目の当たりにしている物体は、全体何なのだろうか。
「キリト」
「何だ?」
私はその物体を手に持ちながら訊いた。
「これは、何?」
「……パン、だ」
嘘つけぇ! これのどこがパンなの!? 遠目から見たら木炭や石炭と何ら変わりないよぉ!
とまあそんなわけで、今私が持っているパンは、ゴツゴツしていて、黒くて硬い。何か卑猥な響きだが、実際そうなのだ。これは本当に人間が食べれるものなのだろうか。人間が食べてもいいものなのだろうか。イギリス料理もビックリである。まあ今は、美味しくなっているらしいのだが。
取り敢えず、持っているパンらしき物体を口に運んだ。
「……………」
バリッ ガリッ
「……………」
ゴリッ ボリッ
う、ううん……微妙……。
と、嘆いていても今はこれしかないし、それにこれでも空腹感は満たされるので、文句を言わずに咀嚼する。キリトの顔も、私と同様に険しいものになっていた。当たり前だわそんなもん。
その黒いパン、黒パンを平らげるまで、私とキリトは一言も喋らなかった。
ハイジの黒パンの方がもっと美味しいと思う。
黒パンを全て平らげると、早速クエストを受けに行った。
クエストの内容は《リトルネペント》というMobを倒した時にドロップする《リトルネペントの胚珠》というアイテムを取ってくるというものだ。《リトルペネンとの胚珠》は一人につき一つ必要で、そのアイテムはリトルネペントの《花付き》を倒さないとドロップしないらしく、そして《花付き》のポップ率が1%ときた。しかも下方修正されているかもしれないそうで、これは長丁場になるだろう。
やはりゲームはゲームらしく、一つ一つストーリーがあり、今回の場合は病気の少女の為にリトルネペントの胚珠が必要なのだとか。胚珠で治る病気とは一体どのようなものなの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ