暁 〜小説投稿サイト〜
流星のロックマン STARDUST BEGINS
精神の奥底
63 怪物の品格 〜後編〜
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「……」
「でも暴行を受ける中であなたの人格は捻じ曲がっていく。でも同時に身体はその暴力を受け入れていった。いくらやり返したところで、人の悪意は尽きない。次のクズが自分を殴りに来るだけ」
「……」
「でも何かキッカケがあった。そのループから抜け出すようなキッカケ。今まで溜め込み続けた“何か”があなたの中で弾けた」

「そうだ。私は抜け出した。一瞬だが何も考えられなくなった。奴らと同じ、人間の醜さに身を預けた」

自分の経歴を並べていくミコトが答えに近づいた段階で安食は口を開く。
口調はいつもの喧嘩腰の強い口調ではない。
紳士的で物腰柔らかなものだった。

「何があったの?」
「暴行の他にも様々な嫌がらせを受けていたが、一番辛かったのは何か分かるかな?」
「寝れなかった…こと?」
「それもある。悪夢を散々見た。そしてそれをいつか奴らにも味わわせるてやりたいと思うようになった。だが悪夢くらいで死にはしない。暴行の次とくれば、食べ物だ」
「食べ物?」
「施設で出される食事はお世辞にも美味しいとは到底言い難いものだったが、我々、孤児にとってはごちそうだった。だが私は奴らに食事を全て取り上げられ、まともなものは口に入れることはできなかった」
「…酷いね」
「不眠症と空腹、全身の激痛の中で私の理性は削られていった。だがある日、遂に事は起こった」
「……」

ミコトはLumiaを胸ポケットにしまうと深呼吸して安食の話を聞く態度を整えた。
何かとんでもないことが起こったのだろうというのは、直感的に感じ取れたからだ。
安食は顔色一つ変えずに続ける。

「いつものようにトレーに食事を乗せ、部屋に入ると奴らがいつものように私の食事を奪いにやってくる。しかし奴らの1人が私のハンバーグの皿を奪った瞬間、何かが弾けた感覚とともに意識を失った」
「……」
「気づいたときには口の回りにデミグラスソースとその日のデザートのショートケーキの生クリームが付いていた。そして奴らは全員死んでいた。奴らだけじゃない。見て見ぬ振りをし続けた職員や他の孤児たちも」
「…どんな気がした?」
「最初に正気に戻った時は、驚きもあったが、それ以上に数年ぶりの満腹感に涙が出ていた。他の孤児たちの食事も全て食べた。初めて人を殺したことも当然のように受け入れていた」
「美味しかった?」
「あぁ。あの苺の味は今でも覚えてる。だが奴らのようなクズを殺して捕まりたくはなかった。徐々に冷静さを取り戻すと、シャワーで血を洗い流して、着替えると施設にあったありったけの金と食事をバッグに詰めて外に飛び出した」
「その後は?」
「金がすぐ無くなって、地下格闘技場で稼いだ。ずっと痛めつけられていたせいか、身体は鍛えるまでもなく、素人の賞金稼ぎ程度はあしらえるようにな
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