精神の奥底
63 怪物の品格 〜後編〜
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ってた帝王切開中の変電所トラブルは偶然じゃなかったってことか?」
「そういうことね。私がこの事を知ったのは、ママの仕事を通して。トリニティーブレインとI.P.Cの役員だったママはいろんなデータに触れる機会があった」
「なるほど。でもそれだけなら、Valkyrieに入る必要もない。Valkyrieは世界中に武器を売る。ニホンに恨みがあるなら、余計な遠回りをすることになるだろ?」
「そう一見、遠回り。でもValkyrieに入ることでこうして私は自由を手に入れた。ママから分離して実体を得ることに成功したわけ。ユナイトカードのテクノロジーが最終的にここに行き着くことは、前から予想されていたしね」
ミコトは自分の髪の毛先を指で触れながら、外の景色を見た。
満ち足りた表情をしている。
「これから1人の人間のとしての生活が始まる。何かに囚われることもなく、好きなときに好きなものを食べて、好きなものを見て、触る。自由を得るために私はValkyrieに入った」
「感想は?」
「最高…でも同時に気づいた。私にとってValkyrieが自分の居場所、お姉ちゃんやママのいるところじゃないって」
「それじゃ、身体を手に入れたからトンズラってわけじゃないのか」
「もちろん、これからも私はValkyrieにいるつもり」
「改めてよろしく。ミコト」
「よろしく、安食ちゃん。じゃあ今度は安食ちゃんがValkyrieに理由を教えて?」
ミコトは後部座席に用意されていた自分への支給品の数々を手に取りながら聞く。
何もかもが新鮮なミコトにとっては、銃を握る感覚すらも新鮮だったのか、物騒なものだという認識はあっても、思わずニヤリとしてしまう。
しかし上機嫌なミコトとは対称的に安食は答えるまで一瞬だけ間が空いた。
「金だよ。Valkyrieが親も死んで、中卒ですらないオレでも入れて、最も稼げる職場だったってだけさ」
「冗談」
「ホントだ。暴力がまかり通らないルールがある状況で一発逆転するには金しかないだろ?」
「でもあなたは決して稼いだ金で豪遊することも無ければ、モノを言わせることもしなてない。もっと他の理由があるはずでしょ?」
「ほう…生まれたての赤ん坊同然のくせになかなか言うじゃないか。で?例えば?」
「自分を正当化するため。とか?」
「……」
安食は黙り込む。
自分の深い部分にズバズバとメスを入れられている気分だった。
だが、不思議と何も言い返すことはしなかった。
「あなたは子供の頃、親に虐待を受けていた。そしてその親が死に、施設に行くことになった」
「……」
「そこで待っていたのは地獄、毎日毎日、死んでもおかしくないような暴行を受けた。そんな中であなたは人っていう生き物の醜さを知った。そして自分がその1匹だってことも
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