第3章:再会、繋がる絆
第74話「足掻く」
[1/11]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
=奏 side=
「.......。」
私は困惑していた。目の前に広がる光景に。
「奏ちゃん、退院できたんだってね。おめでとう。」
「....いえ、あの、■■さんこそ、いつもお見舞いに来てくれてありがとうございました。」
自身の記憶を探ってみても、今会話している相手を知らない。
その事が、私を大きく混乱させていた。
「切っ掛けはちょっとした事だったんだけどなぁ...。まぁ、ドナーが見つかって本当によかったよ。その人にも感謝しなきゃな。」
「....はい。」
会話の相手の言葉に、少し微笑みながら返事をする。
...嬉しく思っているのだ。自分が生きている事に。
確かに、私は前世で生きるのをほぼ諦める程の心臓病に掛かっていた。
だから、こうして退院できる程に回復したのが嬉しいのだと思う。
...だとしたら、今正面にいる彼は誰...?
「(...安心する....。)」
彼と近くにいるだけで、私は深い安心感を覚えていた。
それはまるで、私の全てを包み込むような、そんな暖かさだった。
「さぁ、行こう奏ちゃん。やりたい事、いっぱいあるんだろう?」
「...はい!」
手を差し伸べられて、私は元気よく返事をしながらその手を取る。
...先ほどから私は喋っているけど、全部私の意思は無視されている。
つまり、勝手に喋っているのだ。
「(...誰?誰なの...?)」
安心感があると同時に、彼が誰なのか非常に気になる。
...いや、気になるというより、思い出せない...?
私は、彼を知っている...?
―――...トクン...
「...生きる事の素晴らしさを教えてくれて、本当にありがとうございます。...優輝さん。」
小さな鼓動の音と共に、彼の顔が明らかになる。
...その姿は、あの優輝を青年に成長させた...そんな姿だった。
―――...トクン...
...心臓の音が、私に何かを訴えかけている...そんな気がした。
=out side=
「くっ....!」
ノイズの走る偽物のビル街を、椿は駆ける。
「は、ぁっ....!」
魔力によってできた足場を利用し、何度も跳ぶ。
その度に、寸前までいた場所に赤い短剣が刺さり、爆発する。
「(強い...!)」
苦し紛れに反撃の矢を放
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ