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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第六話 忙しい休日
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ませんでした」

 俺が来ると津田宗凡が白湯を飲んでいた。彼の直ぐ後ろには数人の手代が控えていた。

「小出様、お気になさらずに。この時期はどこの武家も忙しいです」

 津田宗凡は愛想よく俺に挨拶した。

「小出様は御武家様らしくありませんね。商人相手にも謙虚な物言いを為されます。無礼な物言いをしてしまい申し訳ありませんでした」

 津田宗凡は慌てて俺に謝罪してきた。俺は何も気にしていないのだが。

「全然気にしていないです。人の目がある訳ではありませんから、津田殿のように気さくに話をしてもらえると嬉しいです。私はあまり肩苦しい空気は好きではありません」
「かしこまりました。では、ご注文をお聞かせ願えますか」

 俺は津田宗凡に戦に必要な物資の注文を出した。百五十人分の足軽用の貸具足・陣笠。軍馬。物資を運ぶ荷車と駄馬。旗。馬印。全ての品物に俺の考えた家紋を入れさせることにした。小出家の家紋は「丸に園部額紋」。小出本家の養子である俺は本来ならこの家紋を使うことが筋だろうなと思った。だが、俺はこの家紋が好きじゃない。だから、木下家の「沢瀉(おもだか)紋」を変形した「抱き沢瀉(おもだか)菱紋」を俺の定紋にしようと考えたのだ。
 俺は細かい注文に関する指示を出していく。津田宗凡の手代は俺の指示内容を紙に書いていた。その様子を津田宗凡は沈黙し聞いていたが徐に口を開いた。彼は俺に意見することを躊躇っている様子だったが、俺に意見しておかないといけないと強く思っているようだった。

「小出様、ご使用になる家紋は御家の家紋にされた方がいいかと」

 津田宗凡は俺に言いづらそうに言った。「抱き沢瀉菱紋」を俺の定紋としようと思ったがまずいのか。

「小出様の御家の家紋は『丸に園部額紋』と記憶しております」
「それは分かっています。津田殿、この家紋の方が格好いいと思ったのです」

 津田宗凡は俺の話を聞き、しばし沈黙し思案した後に口を開いた。俺は何か不味いことを言っただろうか。小出家の家紋はださい。折角だから格好良い家紋にしたい。俺の初陣を華々しく飾りたいのだ。

「理由なく御家の家紋を使用しない。これは武家において特別の意味があります」

 津田宗凡は俺に初耳なことを言ってきた。勝手に家紋を換えるとまずいのか。小出家なんて成り上がりの家だから、あまり小うるさいことは言わないと思ったのだがな。

「特別な意味ですか?」
「はい。小出様は他の武家に氏族から追放されたと思われてしまいます」
「え!?」

 家紋を好きに換えることがそんな大変な意味があるとは知らなかった。俺は言葉を失った。

「御家の定紋を換えたいのであれば、定紋に少し手を加えられては如何でしょうか?」

 俺が家紋をどうするか思案していると津
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