第十二章
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「この炎は」
「そうか、やはりな」
「特別な炎で私の意志に従って自由自在に動くのよ」
「面白い魔術だな」
「今度はこの術で相手をするわ」
「では参る」
騎士は遠間からランスの突きを繰り出してきた、それは無数の突きだった。その突きから無数の衝撃波が流星群の如く沙耶香に襲い掛かる。
沙耶香はその恐ろしい速さで自分に来た衝撃波達を右に左に姿を消しつつかわす、当たったかと思うとその姿が消えて別の場所に現れる。
炎の球は上下左右にまさに自由自在に動き騎士に向かう。騎士にそれぞれの動きで以て体当たりをしようとするが。
騎士はその炎達を盾で防ぐ、右から来るものは突きを中断してランスで打ち消していく。そしてそのうえでだった。
沙耶香の火球、彼が言う鬼火を全て消した。そのうえで彼女に言った。
「この通りだ」
「またしてもなのね」
「そなたの攻撃は防いだ」
「あれはかなり自信があったけれど」
「これが余だ」
騎士は傲然とさえ見える自信、沙耶香も遥かに上を行くそれで答えた。
「魔術師なぞに。そしてどの様な騎士にもだ」
「負けることはないというのね」
「決してだ」
まさにというのだ。
「誰にも負けぬ、遅れを取らぬ」
「少なくとも私の攻撃は全て防いでいるわね」
「見ての通りな」
「今のところは」
沙耶香はここで再び笑った、そのうえで。
騎士に対してその琥珀の黒い輝きをたたえた目で見ながら告げた。
「私もこれで終わりじゃないわ」
「切り札を出すか」
「そうさせもらうわ、ではね」
沙耶香は姿勢を正しその全身に気をまとった、それは彼女の翼のものではなく紅蓮のものだった。その気と共に。
何かが変わろうとしていた、しかしその瞬間にだった。
沙耶香と騎士の間の道、石畳のそこに二つ刺さった、その二つはどういったものかというと。
カードだった、しかも只のカードではない。タロットの小アルカナのカードだった。そしてそのカードが飛んで来た方角には。
月を背にして一人の男が宙に浮かんでいた、長身痩躯に青いスーツに白のブラウス、赤いネクタイに。
裏地が赤の白いコートを羽織っている、横と後ろを短くしている黒髪は顔の左半分目のところだけを覆っている。
白い細面の切れ長の黒い目を持つアジア系の男だった、その彼が月を背にしてその光を受けながら宙に立っていた。
その彼がだ、沙耶香に顔を向けて穏やかな微笑みで言った。
「間に合った様ですね」
「いえ、早かったわ」
沙耶香は男に顔を向けて微笑みと言葉を返した。
「折角私の見せ所だったのに」
「私がそれを邪魔したからですか」
「そうよ、少し早かったわね」
「このベルリンに急いで来たのですが」
「急ぎ過ぎたみたいね」
「やれやれです」
「もう一人来
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