第十章
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白銀に輝く三日月を背に馬の目と鬣だけが赤く輝いている、見れば騎士もまた馬に劣らず大きい。二メートルはあるだろうか。
その大柄な騎士がだ、馬上から沙耶香に言ってきた。
「余はここにおる、名をヴァルター=フォン=エッシェンバッハという」
「ヴァルター卿と呼ぶべきかしら」
「好きにするがいい、爵位は子爵であった」
「そう、爵位もあったのね」
「猊下にお仕えするな」
「そしてその猊下のご命令で悪人達を裁いていたのね」
「あくまで明らかに不埒な者をな。御主の様に」
ランスで沙耶香を指し示して告げた。
「殺人、強盗、姦淫、そうした罪を犯した者達だけをな」
「それはわかったわ、けれど今は許されないことよ」
「だから余を止めるのか」
「そうよ、貴方にはもう一度眠ってもらうわ」
「やってみよ、余の名にかけて卑怯な振る舞いはせぬ」
騎士はここで左手にある盾を見せた、そこには鷹がある。それが彼の家の紋章であることは明らかであった。
「この家紋にかけてもな」
「嘘は言わないということね」
「そうだ」
「その意気分かったわ、では私も名乗るわ」
「うむ、何というのだ」
「松本沙耶香というわ。姓は松本、名は沙耶香よ」
沙耶香は右手に一礼する様に手を当てて名乗った。
「職業は黒魔術師、覚えてくれてくれるかしら」
「わかった、では松本よ」
騎士は沙耶香を姓で呼んだ。
「今より成敗する、覚悟せよ」
「受けて立つわ」
こう応えてだ、すぐにだった。
沙耶香は騎士がランスを己の顔の前にやり一礼したのを確認してから攻撃に移った、一旦宙に舞いそれからだった。
六枚の翼から羽根を放った、その羽根は漆黒の炎であり四十五十と放たれた。
その何十もの矢達が騎士を襲う、だがだった。
騎士はランスを一閃させその衝撃波をバリアーにして黒い炎の矢を全て防いだ、そのうえで沙耶香に対して言った。
「見事な攻撃であるがだ」
「それでもというのね」
「これではだ」
宙にはばたきつつ留まっている沙耶香に対して言った。
「余は倒せぬ」
「今のは挨拶ではなかったわ」
「本気だったというのか」
「そうよ」
まさにというのだ。
「今のでね」
「そうか、しかしだ」
「その攻撃もというのね」
「余を倒せぬ」
「そうね、この攻撃でもね」
「他の者はいざ知らず余は無理だ」
こう沙耶香に告げるのだった。
「わかっておくことだ」
「そうね、覚えておくわ」
沙耶香は漆黒の夜空から騎士に答えた。
「貴方は尋常ならざる相手ね」
「御主も強い」
騎士は沙耶香の力量は認めていた、全く否定してはいなかった。だがそのうえで彼女にこうも言ったのだった。
「しかし余の強さはさらに上だ」
「だからというのね」
「余に
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