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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十話 挑発
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も言いたい事を」
「静まれ!」

ヴァレンシュタイン、卿の言う通りだ。この程度の挑発で激するような者どもばかりなのだ、戦など到底無理だ。人目が無ければ大声で卿に同意しただろう。もっともそんな馬鹿どもを率いて戦わねばならんとはどういう運命の悪戯だろう。

『ヒルデスハイム伯やラートブルフ男爵、シェッツラー子爵を見れば良く分かります。なんと無様で無能な事か! 戦史に残る愚劣さですよ、呆れ果てました。今からでも遅くはありません、大人しく降伏したほうが良いでしょう。降伏すれば殺しはしませんし生きて行くのに困らないだけの財産も与えます』

「馬鹿な、我等に物を恵むというのか、増長にも程がある!」
「騒ぐなと言うておろう!」

『仕事も与えましょう、そうですね、陛下のバラ園の世話係とかはどうでしょう。陛下のお傍にお仕え出来るのです。貴方達にとっては名誉以外の何物でも無いでしょう。でもバラを枯らしてしまうと死罪ですから注意力散漫な貴方達には無理かもしれませんね』
そう言うとヴァレンシュタインはクスクスと笑い出した。背後で呻き声が聞こえる。

『まあ他にも仕事はありますから悲観する事は有りません。命は一つしか有りませんから良く考えて行動してください。無意味に強がる事はありませんよ、子供じゃないんですから』
スクリーンからヴァレンシュタインの姿が消えた。最後までクスクスと笑っていた。

「ブラウンシュバイク公、あのような事、言わせておいて良いのですか!」
「その通りです。出撃し我等の力を見せ付けてやりましょう!」
「出撃しましょう!」
若い貴族達が血相を変えて詰め寄ってきた。

「騒ぐな! この程度の挑発に乗ってどうする」
「しかし」
「分からぬのか! ヴァレンシュタインは我等を此処から引き釣り出したいのだ」

わしの言葉に若い貴族達は黙り込んだ。だが表情には未だ不満がある。
「児戯にも等しい挑発よ、ヴァレンシュタインは知恵者と思っていたがこの程度とは……、大した事は無いな、ハッハッハッ」

わしが笑うとようやく貴族達も興奮を抑え、笑い始めた。厄介な話よ、味方を宥めるために笑いたくなくとも笑わねばならんとは……。視界の端にグライフスが微かに頷く姿が見えた。



帝国暦 488年  2月 25日  帝国軍総旗艦 ロキ エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


通信を終えてほっとしているとパチパチと手を叩く音が聞こえた。音のする方向を見るとリューネブルクがニヤニヤしながら手を叩いている。この野郎、何が面白いんだ? 冷やかしか?

「いや、なかなか面白い見物でしたな」
「どうせ私には似合いませんよ。リューネブルク中将にやってもらえば良かった……」
俺がそう言うとリューネブルクが笑い出した。

「いやいや、
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