私の死臭
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―――臭い。
乱雑な四畳半で俺は途方に暮れる。
友人たちは『お前片付けろよー』などと揶揄い半分に云うが、俺は片付けるのは苦手だがゴミの放置はしない。生ごみは必ず指定の日に出しているし、それ以前に生ごみが出るような料理をほぼやらない。大抵レトルトやスーパーで買える安い惣菜とか、たまに刺身程度だ。そしてかつては冗談で済ませていた友人たちも、最近は口を噤み始めた。
放置した生ごみ程度だった臭いが、『死臭』に近いものになりはじめたのだ。
友人は俺の部屋に来なくなり、俺を軽く避けるようになった。消臭剤も大量に置いたが、それも意味を為さないような強烈な臭気。それが朝夕ドアを開ける度に鼻を衝くのだ。
サークルでも変な噂が流れ始めた。俺が…人を、殺して隠していると。
「…お前はそういうことは出来ないとは思うんだがな、俺は」
噂をもたらした張本人の親友、渡辺が、臭い部屋の荷物を掘り返しながら呟いた。当たり前だ冗談じゃない。四畳半の中央で、俺は腕を組んだ。
「この臭い、お前の部屋じゃないんじゃね?」
―――え?
「それっぽいゴミも見つからないし、上とか…隣、とか」
隣には独居の老人が住んでいる。生活時間がまるで違うので会うことは少ないが、たまに会うとすこぶる元気そうにしている。
「そうか…じいさん、孤独死しているのだな!」
「虫も多いな…夏場だから腐敗も早かろう」
どちらからともなく、隣の壁に向かって合掌する。
「勝っっ手に殺すなぁ!!!」
ドアがドガガと大音声を立てて開いた。隣のじいさんがこめかみに青筋を浮かべて立っていた。
「霊か!?」
「霊だな!?」
「塩をぶつけろ!!」
渡辺が塩の袋を引き裂いてオーバースローで投げつける。じじいの霊はうわっぷやめんかおかしいんかお前らとかほざきながらのたうち回る。
「効いてるぞ渡辺、そのまま続けろ!!」
「しょっぱいんだよ馬鹿野郎!!高血圧になるわ!!!」
ガッ!と音がして頭にまさかの物理攻撃を食らった。
「あ…生きてら」
遅ぇよ渡辺!!
「当たり前だ!正真正銘の生身じゃい!!」
拳固を震わせて隣の独居老人が猛る。…元気そうで何よりだ。
「あ、あの〜、おじいさまは今日はどのようなご用件で?」
「な〜にがおじいさまだ幽霊扱いしといて。…あんまり臭いから様子を見にきたんじゃ」
口をぱくぱくさせている俺たちを見て何かを察したのか、じいさんは眉をしかめたままサンダルを脱いで上がり込んで来た。
「…と思ったが、あんたはあんたで臭いの原因はこっちだと思っているようだな」
「はぁ……」
「うぅむ…」
俺たちとじじいは、ふと天井を見上げた。
「上の…同棲カップルは最近どうだ」
渡辺が、ふ
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