私の死臭
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部屋の押入れには…マウスが大量に飼われていますよ…」
ちょっ、生餌かよ!?
「ミルワームとかじゃねぇの!?」
「イグアナがそんな可愛いもので満足するわけがない」
「ていうか詳しいなあんた」
「越してきた時の挨拶回りで捕まりましてね…物凄い早口でまくしたてられましたよ、イグアナへの愛について」
思い出すのもおぞましいと云わんばかりに、同棲男は両肩を抱きしめた。
「……その時丁度『食事中』で…鋭い歯で上半身を噛み砕かれたマウスが両足をビクンビクンさせてて…それをイグアナが首をぶんぶん振って水槽やら岩やらに叩きつけて、ビシャって血しぶきがそこいら中に……!!」
肩をビクンと痙攣させて、同棲男が瘧のように震え始めた。
「あっあの男…いやあの悪魔…ニコニコしながら『ポロンちゃんはネズミ好きでね〜、ちょっと前はコオロギあげてたんだけど、もう物足りなくなっちゃって〜』とか嬉しそうに……あいつです……あいつが生餌のマウスが死んだやつを放置して腐らせたんだ、絶対そうだ、ね、あいつやばいですよ追い出しましょう、皆で結託して……」
と、うわごとのように呟きながら、血走った眼で俺の肩を掴んで震えながら揺さぶる。お前の方がやばそうだよ、と言いかけたのをぐっと呑み込む。
「いやいや追い出さなくても…腐らせたなら注意して始末してもらったら…」
「あんたは直接見てないからそんな事云えるんだ!!あいつら悪魔だぞ、あのイグアナも!あの男も!!」
「ポロンちゃんは……理解されない……!!」
――あー来た。もう振り向かないでも分かった。分かったけど振り向くと居るんだろ。巨大トカゲ抱いたひょろけた男が哀しみと慈しみが混ざり合ったムカつく表情で立ち尽くして居るんだろ。…ほら、想像通り。
「……ポロンちゃんの美しさ、気高さ、そしてかわいらしさを理解できない貴方がたに、私とポロンちゃんの出会いからご説明したい、ところです……」
珍妙なペットを飼っているにしては妙に色白で、栄養が悪そうなシワの多い肌をしている中年男がドアの陰でじっと俺たちを見ている。表情の読み取りにくい瞳だけはポロンちゃんにそっくりだ。
「だが、今日は苦情を申し上げに来ました…」
「…え?」
「臭いのです。数日前から猛烈に。ポロンちゃんが興奮しています」
―――マウスの腐乱死体説、轟沈。
「あんたのとこの生餌が腐ってるんじゃないんですか!?確かめましたか!?」
食い下がる同棲男。
「誤解しないで頂きたい…」
こいつの声、何かに似ているなー…と思っていたら、実家の裏の森に棲んでいた梟に似ている。ほぅほぅ、ほぅほぅ。
「常に沢山の生餌を飼育しているのではありません…成獣のマウスはポロンちゃんには大きすぎるので…マウスを番で飼育して、子を産ま
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