私の死臭
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と呟いた。
「どう……って」
俺とじじいはふと固まった。
「最近、女の方を見ないな。ここ一月余り、怒鳴り合うような声がよく聞こえてきていたが、最近はぱったりだ」
「そうじゃ、男の方はたまに見るが、目が合うとそそくさと逃げてしまうのう」
「これは事件の匂いがプンプンするぜ、文字通りな!!」
渡辺の調子が上がって来た。
「痴情のもつれで喧嘩が始まり、男はうっかり女を殺してしまった。そして死体の処理に困った男は!!」
「別れたんですよっ!!」
ドアをダンっと叩く音が響き渡り、二階の男が入って来た。
「犯人か!?」
「犯人だな、確保だ!!」
渡辺とじじいが二階の男に飛びかかって縛り上げた。俺はとりあえず男の鼻先にカツ丼を置いてみた。
「可哀想に…罪の意識でこんなにもやつれはてて」
「罪の意識じゃねぇ、失恋の痛手だ!!あとカツ丼どけろ!!」
「いいんだ、話しな、全てを洗いざらい」
「喧嘩別れで同棲解消、それが全てだ!!人殺し呼ばわりやめろや!!!」
「じゃ、独居老人の孤独死じゃないんですね」
縄を解かれた上の男は、服の乱れを直しながら呟いた。服の乱れを直す。執拗に直す。
「お前も俺の死体が匂ってると思ってたのかよ…若い者はじじいは死ぬと決めつけて…」
じじい、ショック隠しきれない。
「そう遠い未来の話じゃないでしょう。死亡通報システムとか付けてんですか?」
「ぐぬ」
―――割と黒いなこいつ。
奴が縛り上げられている間に渡辺と上の部屋を検めたが、室内は死体どころか異様な程整っていた。…ああこいつ几帳面というか潔癖なんだな。こりゃ、女も逃げるわと納得した。
「じゃ、やっぱりおたくの部屋じゃないんですか!?何ですかこの散らかしっぷり。死体の一つも紛れていてもおかしくないでしょこれ。あぁああ汚い、臭い。もうここに居るだけで肌を虫が這うようだ」
「うるせぇな片付け魔。お前そんなんだから女に逃げ」
「そこまで!伊藤、そこまでだ!!」
渡辺が間に入った。こいつも割と最近彼女に振られているので身につまされるところがあるのだろう。
「同棲カップル殺人事件でも爺さんの死臭でもないとすると、あと考えられるのはどこだ?」
同棲男が、爺さん宅とは反対側の壁をちらりと見た。
「……みなさん、知ってますか?」
同棲男は声を潜めて顔を寄せて来た。
「そっちの…隣の住人、イグアナ飼ってるんですよ」
「いっいぐあな!?」
爺さんが聞き慣れない単語に小さい目をしばたかせる。
「あー…トカゲの大きいような奴だよ」
「ほぅ…」
「そうですそうです。しかも、溺愛。部屋の半分は巨大水槽で埋まってるし、イグアナの餌もぎっしり!」
「イグアナって草食、だよなぁ…」
「肉食のもいます。隣のはまさにソレで、
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