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霊群の杜
書に潜む
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俺もつられて笑った。
俺と奉は、こんな風に笑い合うことはない。俺が笑う時とあいつが笑う時はいつも、違う。鴫崎が親友なのだとしたら、奉は。
あいつは一体俺にとって何なのだろう。鴫崎とこうして他愛無いことで笑い合うたびに思う。
「…悪いな、仕事辞めないでくれよ」
何で俺が謝っているのだろう。
「辞められねぇんだよ、当分は」
鴫崎が足早に本殿に回り込み、賽銭箱に100円玉をちゃりんと放り込んだ。
「珍しいな」
「厭なもの見たから厄落としだ。あいつの住処に落としてやる。それと」
鴫崎はゆっくりと目を閉じて手を合わせた。手水で清めてもいないし、作法にも則っていない。だが真摯な横顔だ。俺は馬鹿馬鹿しいので一度も拝んだことはない本殿なのだが。
「……子供が生まれるんだ」
鴫崎が呟くように云った。
「……へぇ」
どう云っていいのか分からず、相槌だけうった。結婚もそうだが、子供が出来るのも鴫崎が一番乗りだ。家庭に恵まれなかった鴫崎は高校卒業と同時に家を出て働いた。俺とはほんの少し、見ている世界が違う。…鴫崎が、少し遠くに見えた。
「そか、おめでとう。…飯いく?」
「節約のため弁当生活だとよ。悪いな」
そう云って鴫崎は肩をすくめた。また今度LINEくれよーと叫びながら、鴫崎は石段を軽やかに駆け下りていった。


鴫崎はただ、奉が気に入らなくて虐めようとしただけだろうか。


クラスで浮いている奉の人間らしい感情を引き出して晒してみせ、クラスの皆に『こいつも同じ人間だ』と知らしめ、クラスに溶け込ませようとしていたのではないか。もちろん普通にムカついたのもあるだろうが。それが奇しくも更に周囲をドン引きさせることになったのは子供らしい浅はかな誤算だったのかも知れない。現にそれ以降も、あからさまな虐めがなくなった以外は、鴫崎の態度は変わらなかった。…今度飯に行く時にでも聞いてみようか。
―――とか思っていたら先ほどLINEが届いた。


『本日午後便(時間指定)で楽天から玉群様に10kg米(代引き)のお荷物が届いております。あいつはいつか殺す』


だめだこれは。何を云っても『殺す』しか出てこないパターンだ。無理もないけど。俺は適当にスタンプを返すと、そっとスマホを伏せた。その直後だろうか、再びLINEの着信が響いた。…奉が、画像をアップしました。
『持主はこの近辺にいる。気を付けろ』
そんなメッセージと共に届いた画像を検める。…さっきの本だ。ったく、わざわざ画像まであげて報告してこなくても。こんなもの送られて呪われやしないだろうな…画像の中央に重々しく置かれた紺色の本のタイトルは金押でこう記されていた。


『解剖学』


暑さによるものとは違う汗が、つぅ…とこめかみを伝った。
この本を持つ人物は…かなりの確
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