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歌集「春雪花」
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 恋しくも

  逢えぬは君の

   思い出も

 褪せて消えゆく

      秋の山波



 どれだけ私が恋しく想おうと…こうして会うことのない時間が長ければ、彼の中の私の思い出は薄れてゆくだけ…。

 それはまるで…鮮やかな色彩を纏いし秋の山波が、色褪せて…冬の雪に覆われてゆくようなもの…。

 私は所詮…彼にとっては無用の長物なのだ…。



 色散りし

  もみぢ葉落つる

   冬空に

 叶う恋など

   無きと思へば



 枯れ果てた紅葉の葉が、はらはらと落ちてゆく…。

 気付けば…空は冷たく、光さえ寒さを纏う…。

 どんなに晴れていようが、冷たさを見せる冬の空は…私には誰もいないのだと言っているようで…。

 あぁ…私には叶う恋など、最初から無かったのだと悟った…。

 きっと私は…始めから独りであることが当たり前だったのだ…。


 ただ、それを私が…忘れていただけの話なのだ…。




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