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第六十七話 体調が悪くても無理をしなくちゃならない時があるのです。その2
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たわ。」と言っただけだった。エステルは何かにつかれたように急ぎ足で邸内に入っていった。見慣れた玄関ロビー正面の分厚い絨毯が敷かれた階段を上がり、2階左手の一番突当りのドアを開ける。と、薬の匂いと暖炉の火のはぜる匂い、そして病気特有の気の滅入るようなにおいと空気がいっしょくたにエステルの鼻孔を襲った。
「おじいさま。参りました。」
エステルが声をかけると、かすかにせき込む声がした。奥に進んだエステルはグリンメルスハウゼン子爵の病臥している部屋に入った。
「おじいさま・・・!!」
エステルは胸に手を当てた。先日会った時とは明らかに様相が違っている。顔は黒ずんで、生気を失い、今にもしぼんで消えてしまいそうだった。ベッドの敷布の上に置かれている手も黒ずんで水分を失ってカサカサしている。枯れ木、朽ち木。エステルの脳裏にそう言った単語が無意識のうちにうかんできた。
「おぉ・・・。エステルか。」
グリンメルスハウゼン子爵爺様は孫娘の声を聴いてその瞼を薄く開いた。
「どうやらヴァルハラに旅立つ時が来たようじゃ。今まで世話になったのう。」
「そんな一方的な。」
アレーナ・フォン・ランディールが後ろからやってきてグリンメルスハウゼン子爵爺様に話しかけた。
「おじいさまにはまだまだ現役で活躍してもらわなくてはならないんですよ。おじいさまの構築なさった情報網はどうなりますか?それにうちのマインホフおじいさまや皇帝陛下が寂しがります。いわずもがなエステルだってそうですよ。」
グリンメルスハウゼン子爵は弱々しいながらもあのいつもの笑い声をあげた。
「するとアレーナよ、儂の代わりにヴァルハラに赴いて寿命を数年延ばしてくれるようにかけあってくれるのかの?」
「う、それは・・・・。」
アレーナは言葉に詰まった。死を目の前にしている老人を前にして論破もできず、本気で困り果てているようにエステルには見えた。
「そうじゃろう。人には人の寿命、命数があるのじゃよ。それと向き合わず悪戯に延命を求めるのはまさしく大神オーディンに対する冒涜となろうでな。」
このグリンメルスハウゼン子爵爺様がそのようなことを本気で信じているとはアレーナ、エステルには思えなかった。そういうことによって「自分はやることはやった。もう悪戯に延命をせんでくれ。」と言っているような気がしたのだ。そう思った二人の中には悲しみというよりも、このままグリンメルスハウゼン子爵爺様を滞りなくヴァルハラに送り届けることが大事なのだと思う義務感が芽生え始めていた。
「皇帝陛下やフリードリッヒのことはもうよいのじゃ。儂から既に別れを言うておるでな。」
グリンメルスハウゼン子爵爺様はすべてを話したというように目を閉じかけたが、
「エステルよ。」
エステルは枕元にひざまずいた。
「はい、おじいさま・・。」

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