番外編 残された姫君達
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男の土俵に上がるってのは普通じゃねぇんだ。本当なら、そんなことがあっちゃいけねぇ。女を守るために強く生まれてきたのが、男なんだからな』
「……」
『だから女が男に成り代わるんなら、女を捨てるくらいでなきゃいけねぇ。だがお前は、女として例の坊主を愛してる。……そういう矛盾があんだよ、お前には』
歯に衣着せぬ物言い――であるようで、どこか温かみのある声色。そんなケンタの言葉に触れ、マイの眉が僅かに緩む。
『だから……強さを身に付けな。心の矛盾を埋めるほどの、圧倒的な強さをな。どうせ今更コスモソードを降りる気も、例の坊主を忘れる気もねぇんだろ。だったら、時間が過ぎて嫌でも忘れちまうまでは……もうそれしか、お前が生き延びる手段はねぇぞ』
「……言われずとも。私はもとより、そのつもりです」
『けっ、大物め』
そして、相変わらずな憎まれ口を叩くマイの物言いも。ケンタに比例するように、何処と無く角が取れたものに、変わっていた。
――その時。
『緊急入電、緊急入電! 東京上空に、所属不明の機影が多数――ゆ、UI! UIです!』
「……!?」
『ち……どうやら、卒業試験はちと前倒しになりそうだな』
突如、通信に入り込んできた緊急入電。その赤く発光している警報に、ケンタが舌打ちする一方で――マイは不意を突くように訪れた初陣の瞬間を前に、冷や汗をかいていた。
白い頬を伝う雫を、拭う余裕すらない。操縦桿を握る手が、震える。それは恐れか、武者震いか。
『……来やがったなクソが! いいか、辻霧は攻撃より回避を優先しろ!』
「りょ……了解ッ!」
それを確かめる暇もなく。
四本の羽と、八本もの脚。そして六つの眼と二本の鎌を持つ醜悪な怪物が、群れを成して東京の上空から舞い降りようとしていた。
まだ惑星アースグランドが「地球」と呼ばれていた、遥か昔の時代。
その連綿と続く歴史の一つである「昭和」を彷彿させる、ノスタルジックな街並みが今――侵略者が跋扈する戦場になろうとしていた。
◇
一瞬にして、阿鼻叫喚の煉獄と成り果てた東京。その街道を逃げ惑う力なき人々に、空から襲い来る獰猛な怪物達が覆いかぶさっていく。
常人の数倍の体格を持つ彼らは、建物や道路に張り付き次々と人間を襲っていた。その光景を目の当たりにしたケンタとマイは、同時に歯を食いしばる。
燃え盛る市街地の施設や、脱線し横たわる路面電車の残骸が、被害の大きさを物語っているようだった。
「正規部隊はまだ動いていないのですか!?」
『すでに緊急出動命令は掛かってる。だが奴らを補足してからまだ二分も経ってねぇからな。連中がここに到着して攻撃を開始するまで、あと十分は掛かるだろう
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