番外編 残された姫君達
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、実戦レベルまで鍛えるのが容易であるという見込みがあること。
そして――マイと懇意であったこと。
マイを狙うがゆえに、彼の存在を疎んでいた他の上級武家が、優先的に彼を徴用するよう軍部に働きかけていたのである。実際、飛行士としての彼自身が持つ能力が無視できないものであったことも、その点では優位に働いてしまったのだ。
これを受け、マイはカケルの徴用を辞めさせるよう父に懇願したのだが――征夷大将軍の勅命である徴兵を断る、というのは武家にとっては最大の恥であり、カケルにそれをさせてしまうのは酷である、と断じられてしまうのだった。
さらに当のカケルまでもがあっさりと徴兵に応じてしまい、マイは彼の門出を見送るしかなくなってしまうのであった。
「大丈夫だよ。皆の笑顔も、君の笑顔も。ちゃんと、オレが守るから」
旅立ちの日。彼の家族すら笑顔で見送っている中で、一人泣きじゃくっていた自分に、彼が微笑と共に遺した最期の言葉を――マイは今でも、はっきりと覚えていた。
(カケルお兄様は、あの時……生きて帰る、とは言って下さらなかった。わかっていらしたというの。もう、生きては帰れないと……)
そして、その言葉を最期にカケルは初陣で消息を絶ち――戦死と公表された。
それから半年を経た今。今度はマイ自身が、パイロットとして戦場に立とうとしている。
最愛の彼を奪ったUIを、一匹残らず駆逐するために。
◇
『色恋は人生を狂わせる、とはいうが……。狂った人生を歩んでる小娘が、一番優秀なパイロット候補っていうのは皮肉な話だぜ』
「狂ってなど、いません。私は、私なりに正気であります」
『女はコスモソードになんか乗るもんじゃねぇ、普通はな。その普通から外れてんだ、十分狂ってるさ』
マイの才覚に対応するかのように、訓練は苛烈さを増して行き――脱落者は過去最多に及んでいた。
だが、その中で遠因であるマイ自身は次々と訓練を乗り越え、叩き上げの職業軍人であるケンタに肉迫するほどの技量まで成長しつつあった。
そんな彼女の抜きん出た才能に、内心で舌を巻きながら。あくまで教官として接する彼に対し、マイは自分の過去を勝手に調べられたこともあって、冷淡に接していた。
現在、二人は澄み渡る青空の下。
カーキ色に塗装された帝国製コスモソードを操り、祖国の空を駆け抜けている。両機とも、ドッグファイトに長ける格闘戦タイプの機体であった。
マンツーマンでの模擬戦を終え、基地に帰投する最中であるが――その中で交わされる通信でも、彼らの間には刺々しい雰囲気が漂っていた。
「……カケルお兄様をお慕い申し上げるこの気持ちが、間違いであると仰るのですか」
『別に、男の趣味に口を挟む気はねぇよ。だがな、やっぱ女が
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