番外編 残された姫君達
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な面持ちで答えようとする。が、彼は鋭い眼差しで彼女の瞳を射抜き、その言葉を遮った。
それを受け、マイの表情は僅かに強張る。
――帝国において、女性パイロットという存在は希少ではあれど前例がないわけではない。
長引く戦争により男手が失われるに連れ、それを補うために女性パイロットが組み込まれてきたケースは幾つかある。
だが、それはあくまで後方支援の予備人員としてのみであり、最前線に立つ役目は男子一色であり続けてきた。
最前線そのものであるコスモソードのパイロットに女性、それも若い娘が志願するなど、前代未聞なのである。
その動機について彼女は、今口にした言葉の通り武家として真っ当な「御題目」を掲げていたのだが。
徹底した現場主義であり、人類の道理が通じない侵略者を相手にしてきたケンタにとって、そのような「取って付けた建前」に興味はないのである。
戦場という極限状態に置かれれば、人の理性は簡単に失われる。その時に露わになる本性は、当人の意図に反して他者を陥れてしまうこともある。
だからこそ、建前の先に隠された本音を知る必要があったのだ。武家の者達が、美辞麗句で塗り固めた防壁の向こうにある、本心を。
「……そ、れは」
「まぁ、言えんだろうな。実家の両親にも話してねぇことを、赤の他人に言えたら苦労はねぇ。……まして、家来の坊主が理由とあっちゃあな」
「……!?」
だが。その美辞麗句で固められた環境で純粋培養されてきた彼女に、それを求めるのは難しいということは容易に予想されていた。
だから、自分から殻を破らせるよりも容易く、本性を解きほぐすため。ケンタは自分の口から、彼女の「御題目」を剥がすことを選んだのである。
「この帝国で、初めて徴兵制度が施行された半年前。第一期生の一人だった『竜造寺カケル』はお前の家来であり、幼馴染だった」
「ど、どうしてそれを……!?」
「そいつの仇を討つために、お前はパイロットを目指してここに来た……だろ。わざわざお前の実家と親しい上級武家のお偉方から聞き出したんだ、苦労したぜ」
「……!」
ケンタが身辺調査の中で見つけた、マイが戦う本当の理由。その全てが見抜かれていたことを悟り、彼女は唇を噛み彼を睨む。
だがケンタ自身も、このような眼で見られることになるのは想定内だった。そうでもしなくては、彼女の本心には辿り着けないからだ。
――女としての自分を捨ててまで、武家の姫君が戦場の空に向かう理由には。
◇
帝国内に僅かに存在する上級武家。一握りの大貴族とも云うべき、その天上人の中でも特に強い権勢を持つ辻霧家は、常に他の勢力を圧倒する権威を誇っていた。
その名家に生まれ育ったマイは、幼少の頃から己が持つ価
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