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超速閃空コスモソード
番外編 残された姫君達
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国内はコズミシア全域の縮図であるかのように、余裕のない状況が続いていた。

 このような事態に陥った原因としては、徴兵制度の施行当初に徴用された武家の男子達が、初陣で一人残らず全滅したことが挙げられている。
 満足に訓練も終えていない子供が、歴戦の兵士すら羽虫のように潰されて行く戦場に放り込まれれば、どうなるか。その結果が、すでに現実の数字として現れてしまっているのだ。

 そうした結果から、これ以降の徴用された武家の少年達は次々と脱走し。それを見た民衆が、こぞって武家を糾弾する。そんな悪循環が、絶えず繰り返されていた。

 これを受け、征夷大将軍は士気の低下を避けるべく、強制的であった徴兵制度を一時中断。有志を募る義勇軍として、改めて武家の者達に戦意を問う方針となった。

 その瞬間、真っ先に名乗りを上げたのが――男子ですらない、当時十四歳の辻霧マイ少尉だった。

「……で。結局残ったのもこいつ、か」

 日埜本帝国の首都・東京。
 国家の中枢であるその大都市の郊外には、コスモソードの新人パイロットを養成するための、特殊な教育機関が設けられている。
 そこで徴兵されてきた武家の若者達が、次代のパイロットになるべく訓練を受ける……の、だが。

「石動教官。次の御指導、お願いします」
「……まぁ、待て。武家の名に恥じぬ帝国男児が絶滅しかかっているという現状への憂いで、暫く前を向けそうにねぇ。俺が立ち直るまで、少し待ってろ」

 基礎体力。座学。飛行訓練。そのいずれにおいても、今期の新人達は軒並み使い物になる気配がなく。
 その中で唯一、突出した才能を発揮していた人物が「女」であったことに、当時の石動ケンタ大尉は情けなさの余り目を伏せていた。

 深くため息をつき、俯く強面の教官。そんな彼を真摯な眼差しで射抜くマイの後ろでは、心を折られた少年達が膝をついていた。
 彼らとて武家の男子。自分達が女子のマイより劣っていることに、何も思わないはずはない。だが、その思いとは裏腹に、目に見える結果は悲惨なものとなっていた。
 それゆえ。彼らはただ、屈辱の表情で俯くより他ないのである。

 ケンタは、そんな彼らの様子を一瞥したのち。汗一つかくことなく、欠片も妥協することもなく、次の試練を求めるマイに視線を移した。
 その時の彼が浮かべていた苦々しい面持ちは、「普通、逆だろう」という彼自身の胸中をありのままに映している。

「……辻霧。お前、何のためにパイロットを目指した。武家の出とはいえ、女のお前が」
「ここに来た日に、申し上げた通りであります。武家の者としての務めを果たし、祖国に奉仕するための――」
「――そういう耳障りのいいおべんちゃらは、いらねぇ」
「……!」

 ケンタの問いに、マイはあくまで真剣
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