番外編 残された姫君達
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れてしまうというのは、怖いことです。この気持ちまで、いつか失ってしまうのかと思うと」
憂いを帯びたその横顔を見遣るマイは、何も言えないまま唇を結ぶ。彼女が縁談を受け入れない理由を知る彼女としては、これ以上言い募るのは憚られた。
――マリオン・ルメニオンは、ラオフェン・ドラッフェを愛していた。否、今もその想いに変わりはない。
UI戦争終結と共に消息を絶ち、軍部により戦死と公表された、今でも。
「そのようなことは、ラオフェン様も望まれてはおられないかも知れません。それでも私は……」
「……私も是非一度、ラオフェン大尉にはお会いしたいと思っていました。我が祖国にとっても、大恩ある方でしたから」
UI戦争に終止符を打ち、この全宇宙を侵略者から救った救世主。その存在は直に会ったことのない者達にとっても、英雄となる。
――戦場で、直接助けられたことのあるジャパン・エンパイアの軍人にとっては、尚更であった。
「……不思議、ですね。目を閉じれば、あの人の笑顔はいくらでも思い出せるのに。鮮明に、覚えているのに。その人がもういない上に、自分自身までそのことに慣れかけている」
「そういう、ものでしょうか……」
「わかりません。……ただ。『君を笑顔にしたい。戦争が終われば君が笑う、というのならオレは戦う』――そんな夢を語ってくださったあの方の微笑みだけが、今も私の中に在り続けているのです」
マリオンは時に、ラオフェンという救世主がどのような人柄であったかをマイに語っていた。その節々から感じられる、大らかな人物像に――マイは少なからず、既視感を覚えていた。
「笑顔に……」
自分がパイロットになるきっかけにもなった。三年前に永遠に失った、最愛の幼馴染。
その少年の笑みが、マリオンの言葉に呼応するように。彼女の胸中に、蘇っていた。
◇
――星霜歴2025年。UI戦争の幕開けから、およそ半世紀。
長きに渡る戦いの中で突如、戦場の主役として颯爽と登場した「コスモソード」の存在に、コズミシア全域の誰もが注目していた。
そのきっかけであり、急先鋒でもあるラオフェン・ドラッフェ大尉の活躍が民衆に知れ渡っている頃。
ジャパン・エンパイアと諸外国に呼ばれている「日埜本帝国」では、徴兵制度の施行が進んでいた。「ジャパン・エンパイア国防軍」と呼称されている帝国軍では現在、多くの幼い少年兵達が全国各地から掻き集められている。
その対象は諸外国で云うところの貴族に相当する、武家の者達。特に年若い次男や三男が、主な兵力源として多数徴用されていた。
しかし。十五にも満たず、軍人としての教育も完了していない少年達の中には、兵役を恐れる余り出奔する者も少なからず存在しており、帝
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