番外編 残された姫君達
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と顔を付き合わせていた。真紅のドレスを纏う彼女の容姿は、普段の軍服姿とは程遠い淑女の様相となっている。
このレストランにいる人間は、誰もがコズミシアにおける超上流階級ばかりだが――この場にいる者達もまた、マイの美貌には釘付けにされているようだった。
……だが、彼らが目を奪われているのはマイ一人ではない。
今、窓から街の景色を一望しているもう一人の少女。マイと同席しているその人物は、蒼いドレスを纏う神秘的な美少女であった。
艶やかな光沢を放つ銀髪を、サイドテールのように結んでいる彼女は、マイ以上に白く珠のような肌の持ち主であった。ややスレンダーな体躯であるが、それでも身長に対して見れば非常に女性的なラインを描いている。
例えるなら、美の妖精。あらゆる種族を超越し、魅了する絶対の存在。
それが彼女、マリオン・ルメニオンなのである。コズミシア星間連合軍総司令官の一人娘である彼女は、軍の内外からその美しさもあって以前から注目されていた。
そのため、マイ以上に縁談の話が濁流のように降りかかっている人物でもある。同じ悩みを抱えた女として、彼女達は階級を超えて友人としての付き合いを続けていたのだ。
「来週にはコスミュールコーポレーションの社長と縁談なのですが……あまり気は進みませんわね」
「コスミュールといえば、コスモソードの製造を請け負う大企業ではありませんか。お気に召さないのですか?」
「確かに、私を通じて軍と企業がより密接に繋がるのであれば、この星々の防衛体制はより磐石なものとなるでしょう」
「でしたら……」
「……ただ」
コズミシア星間連合の中においても、特に強い権勢を持つ大企業コスミュールコーポレーション。
五十年に渡る大戦を終わらせた兵器を造り出した企業であることから、軍と同様に高い名声と資金を集めていることでも広く知られている。
三年前にUI戦争が終結して以来。軍部は戦争を終わらせ民衆を救った立役者として、劇的に勢力を伸ばしてきた。
今では次なる脅威に備えるべく軍拡化の動きも高まりつつあり、事実上コズミシアは、全宇宙規模の軍事国家になろうとしている。
そのような時代において経済面で幅を利かせるのが、軍需企業だ。その筆頭たるコスミュールコーポレーションからの縁談を切るなど、並大抵のことではない。
例え、総司令官の令嬢であるとしても。
「……」
――だが。そこまで理解していながらも、マイはそれ以上彼女を追及しようとはしなかった。
同じ貌をしているからだ。
愛する人を失い、その影を振り切れずにいる自分と……。
「……ただ、今は……そんなことは考えられそうには、ありませんの。いつか彼を忘れる時までは……」
「マリオン様……」
「でも……忘
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