番外編 残された姫君達
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えられない、実質的な求心力ってもんがある。オヤジ共も、ただグチる相手が欲しかっただけだろうよ」
教え子のことで骨を折ることを厭わず、むしろどんとこい、とばかりに鼻を鳴らすケンタ。齢二十五とは思えぬその横顔を見上げ、マイは安堵するように息を吐く。
――戦時中、UIの攻撃で右目を負傷して以来。前線を退いてコスモソードのパイロットを養成する教官となっていた彼は、辻霧マイを輩出したことでコズミシア星間連合軍から注目を集めていた。
その縁で、彼女と同じくジャパン・エンパイア国防軍からの出向という形で、このヘレンズシティ航空基地に着任しているのである。今では泣く子も黙る鬼教官として、コズミシア軍の若手パイロット達から恐れられる存在だ。
マイとしては、自分のエゴで恩師であるケンタを振り回しているのではないか……という自責の念もあったのだが。その胸中を見抜いているケンタは彼女の不安を取り除くべく、そのように振舞っているのだ。
――そして、彼女を深く知っている彼は。マイが縁談を断り続けている真意にも、辿り着いている。
「……あと、何年掛かる」
「……わかりません」
何が、とは言わない。そんなことはお互い、分かり切っている。
「辻霧。例の坊主がそうだったように、お前にはお前の信じた道があり、人生がある。坊主は終わっちまったが、お前にはまだまだ続きがある。いつまで掛けても構わないが……いつかは、踏ん切りってもんを付けとけ」
「はい……わかっています」
「わかってないから、三年も引きずってんだろうが」
ケンタの追及をうけ、マイの視線が下方に落ちる。迷いの色を濃く滲ませる、その眼差しを一瞥し――強面の教官は、僅かに溜め息をついて離れていく。そろそろ、訓練生のところに戻らねばならない。
「……」
「……ま、そいつ自身の根底にあるものってのは、どうしたって他人には動かせねぇ。お前のやりたいようにやるのが一番には違いないが……いいか、後悔はするな。忠告はしたぞ」
ひらひらと手を振り、立ち去って行くケンタ。その背を、マイはただ見送るしかなかった。
豊かな胸に乗せられた、彼女の白くか細い手は――失われた「過去」に縋るように、力無く震えている。
(……カケルお兄様……)
◇
「先日のお茶会以来ですね、マイ。またこうして同席出来て、嬉しいですわ」
「いえ……こちらこそ。またこうしてお招き頂けて、至極光栄に存じます。マリオン様」
「あまり固くなさらないで下さいませ。今日はそちらで仰るところの、ええと……」
「無礼講、でしょうか」
「そう、そうです。ブレイコウで参りましょう」
訓練結果を一通り報告し終えたのち。マイはへレンズシティの街並みを一望できる高層ビルのレストランで、ある人物
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