番外編 残された姫君達
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。今日は、ええと……そう、ブレイコウ? なのですから。やはりあなたも……忘れられないのですね」
「……お恥ずかしい限りです」
たおやかな微笑を浮かべる美姫の前で、マイは顔を赤らめ俯いてしまった。鉄血の軍人としての威厳など、まるでない。
「そんなことはありませんわ。もし恥ずかしいことだというのなら、私も恥じらわねばなりませんわね」
「あ、いえ、そういうつもりでは……」
そんな彼女に、労わるように語り掛けるマリオンは。やがて、真摯な眼差しで彼女の瞳を射抜き――聖母のような笑みを浮かべた。
「けれど。ただ一人の愛しい人へ、一途な想いを貫く。そんな愛の形があっても構わないと、私は信じていますわ」
「……!」
死してなおも、生者の心を掴む男。そんな相手への一途な愛は、決して間違いではない。そう言い切るマリオンの言葉に、マイは目を剥いた。
死者に囚われてはならない、と豪語するケンタとは真っ向から対立する思想だが――マイはなぜか、恩師の教えより彼女の言葉に、心を引き寄せられていた。
それは、竜造寺カケルへの想いを捨てられない彼女にとっては、ある種の救いだったのかも知れない。
「だからこそ私は、心のどこかで信じておりますの。いつかラオフェン様が……ひょっこりと、帰って来てくださる時を」
「そ、それは……」
「きっと、あり得ないでしょうね。でも、構いませんわ。私は、信じたいことを信じます」
「信じたい、ことを……」
例え、荒唐無稽でも。決してあり得ないことでも。それで自分の心が救われるなら、信じたいものを信じる。
そう語る彼女の横顔を、マイは羨望の眼差しで見つめていた。そんな風に生きられたら、どんなに――
――いつか、竜造寺カケルに会える日が来たら、どんなに。
(……っ!)
考えてしまった。自分も、マリオンのように。
そして、それこそが本心なのだと、嫌でも思い知らされてしまう。
(カケルお兄様……私、やっぱり……あなた様のことが……)
この瞬間。彼女達は、互いに告げることなく。同じ想いを抱え、生き続ける道を選ぶのだった。
いつまでも、愛する人の帰りを待ち続ける。そんな、途方もない道のりを。
――だが。二人は知らなかった。
自分達が「同じ男」を、愛しているのだということを。
◇
(マイ……マリオン……君達は、今どうしてる? 素敵な相手を見つけて、幸せになってくれてるだろうか……)
一方。惑星ロッコルで穏やかに暮らす、竜造寺カケルは。
ポロッケタウンの外れにあるオアシスを背に、雲ひとつない晴れ渡る空を仰いでいた。
「コラッ! 見張りが何ボーッとしてんだ」
「あたっ!? ご、ごめんアイロス」
「全く……しっかり
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