番外編 残された姫君達
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彼の言う通り、ケンタが着地した山中へと向かっていた。
確かに、無理に自分がケンタを救出しようとするよりは、格闘戦タイプの性能を活かして尖兵の駆逐に専念した方が効率的だろう。ハンデをものともしない技量であるとはいえ、ラオフェン機は本来ドッグファイトには向かない加速タイプなのだから。
(でも……気に入らないわ、あの男)
『さァ、狩りの時間だ。せいぜい、足を引っ張らないように頑張れよド素人』
「……協力には感謝します。でも、言葉遣いには気をつけてください。上官の――ラオフェン大尉の沽券に関わりますよ」
『はぁあ!? 俺はあいつの部下じゃねーよナメたクチ利いてるとブチ犯すぞコラァ! 聞いてんのかアァ!?』
(……本当、気に入らない)
ただ。ケンタを「負け犬」呼ばわりし、乱暴な言葉遣いで自分を罵り、市街地を危険に晒した彼のことは、どうにも気に食わず。
マイは止む無く協力を仰ぐ一方で、セドリックに対し強い嫌悪感を抱くのだった。
◇
一方。山中に着地したケンタは、道無き道をふらつきながら歩いていた。
森の中を歩む彼の頭上では、未だ熾烈な空中戦が続いている。
「クソッタレ……まさかこの俺が、真っ先に脱落とはな……。教え子を残して早々に退場なんて、いい恥さらしだぜ」
苦々しい表情で空を仰ぐ彼の眼は、セドリック機と共に奮戦するマイ機を映していた。彼女はこの初陣の中で、もはや新兵という枠には到底収まらない器へと成長している。
「辻霧……」
その戦い振りは、教官としてはこの上なく鼻が高い。はずなのに、彼の表情は憂いを帯びている。
あれほど命を削って戦っているというのに、戦う理由である竜造寺カケルはこの世にいない。その現実が、当人以上にケンタを苛んでいたのだ。
(……だから、死んだ人間なんて忘れた方がいいんだよ……クソッ!)
どれほど生きている人間が死んだ人間のために戦ったところで。死んでしまった人間は、悲しみも喜びもしない。それどころか、知りもしない。
死んでしまえば、お終いなのだ。だから生きている人間は、死者に魂を引かれてはならない。
その信条に反して戦うマイは、どこへ向かうのか。その行く末を、ケンタはただただ案じていた。
「……ッ!?」
すると。ケンタがいる森の中に、突如猛風が吹き抜け――草木が荒々しく揺らめいた。
何事かと視線を移した先では、赤く縁取られた加速タイプのコスモソードが、山の平地に着陸している様子が伺える。
「……お待たせしました!」
「まさか……!?」
恐らくは、パラシュートで脱出した自分の救出に来たのだろう。それは、容易に予想できた。
が。コクピットから出て来たラオフェン・ドラッフェが――年若い少年だったことまで
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