番外編 残された姫君達
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上空に現れたそれは――赤く縁取りした加速タイプの機体であった。
加速タイプ特有の流線型ボディは、紛れもなくUIの「核」を倒すためのもの。そしてその機体のカラーリングは――ケンタも、噂を通して聞き及んでいた。
「ラオフェン……ドラッフェ!」
ケンタがその名を叫んだ時。赤い縁取りと白いボディが特徴の、その加速タイプのコスモソードは、再びレーザー掃射を開始した。
先ほどのように、ケンタやマイ機だけには当たらない絶妙な射撃を繰り返し、次から次へとUIを駆逐して行く――伝説のパイロット。
その鬼神の如き戦いには、マイも閉口したままとなっていた。
(……す、凄い。あれが、伝説のラオフェン・ドラッフェ……!? でも、あれは……)
だが。尖兵とのドッグファイトには不向きであるはずの加速タイプで、獅子奮迅の活躍を見せる彼の技量に、感嘆する一方で。
彼女は――ラオフェン機の挙動に、どこか既視感を覚えていた。記憶の中で舞い飛ぶ桜が、青空を翔ける加速タイプと重なって行く。
「……はっ、そうだ……石動教官ッ!」
それから僅かな間を置いて、ようやく自分の状況を思い起こしたのか。マイは尖兵を屠り続けるラオフェン機を他所に、パラシュートで山中へ降りて行くケンタを追おうとする。
――だが。行く手を阻む尖兵目掛け、レーザー砲の発射レバーを引く瞬間。
『負け犬はあの甘ちゃんに任せな。新兵が他人の心配なんかしてっと、あっという間にあの世行きだぜ!』
「なっ……!」
もう一機。漆黒のボディと青い縁取りを持つ、格闘戦タイプのコスモソードが現れ――瞬く間に目の前の尖兵達を蜂の巣にしてしまった。
『オラァアァ! 黙ってくたばりやがれ蛆虫共がァアァア!』
「ちょ、やめっ――!」
獰猛な叫びと共にUIを襲い、市街地戦であるにも拘らず爆弾まで使うそのコスモソードに、マイは抗議の声を上げようとするが――その叫びさえ、黒の機体は爆風で掻き消してしまう。
(なんて奴! あのラオフェン・ドラッフェ大尉と一緒に現れたみたいだけど……まさか仲間なの!? あんな荒くれ者が!)
しかも、よく見れば。
一歩間違えば市街地に甚大な被害を齎す禁じ手である爆弾は、地上の街には一発も落ちていない。そればかりか、爆風もほとんど及んでいない。
「……信じ、られない」
一見、周囲の被害を考慮しない野蛮な戦法のようにも見える、黒のコスモソードの戦い方は。市街地を爆撃しないギリギリのラインで、効率的に尖兵を殲滅する大胆かつ繊細な立ち回りだったのだ。
この機体のパイロット――セドリック・ハウルドは、それを可能にする程の超人的技量の持ち主なのである。
彼が凄まじい勢いで尖兵達を屠る一方で、ラオフェン機は
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