番外編 残された姫君達
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でに彼女はこの絶望的な戦局にも屈しないパイロットへと成長していた。
この娘は、間違いなく強くなる。帝国を象徴するパイロットになるだろう。
だからこそ、何が何でも、こんなところで死なせるわけにはいかない。
「辻霧ッ!」
――その一心で。
「……教官ッ!? あ、あぁっ……!」
ケンタは、物量に押し切られかけていたマイを庇うように、鎌と機体の間へ割り込んでいた。マイ機の盾になるように、鎌の一閃を浴びたケンタ機は――黒煙と共に、東京郊外の山中へと落ちていく。
(……へっ)
その時には、ケンタ自身はすでにパラシュートで脱出していたのだが。
――戦闘の真っ只中で緊急脱出しておいて、無事に逃げおおせるような世の中なら、もっと多くのパイロットが生き延びていた。
戦闘中の損傷により機体から脱出する際、当然ながらパラシュートで降下している最中は完全な無防備となる。人間を喰らうUIの尖兵が、それを見逃すはずもない。
戦場での緊急脱出は、生きたままUIの餌になることを意味していた。それを知りながら、ケンタは敢えてその道を選び――パラシュートでの脱出に臨んでいる。
生きたまま捕食される恐怖から、操縦不能になっても脱出に踏み切れず墜落死するパイロットもいる中で、彼は自らその道に踏み切ったのだ。
(見てな、辻霧。帝国の軍人ってのは、クソ厄介な生き物だってことをよ!)
ただ、彼は尖兵の餌になることを望んでいるわけではない。一匹でも多くのUIを、道連れにすることが狙いだったのである。
――胸に抱いた手榴弾を、連中の口の中で炸裂させることで。
「だ、だめ、です。だめぇえぇえ!」
これから死にゆく者とは思えない貌で、獰猛に嗤うケンタ。
彼の表情からこの先の行動を予見したマイは、動揺のあまり叫ぶが――すでに尖兵の牙は、ケンタに決断を迫るように唸っていた。
そして彼は、一欠片の迷いもなく手榴弾のピンを抜き――
「がぁっ!?」
――自爆のため、それを胸に抱こうとした瞬間。突如吹き抜けた烈風に、その行動を遮られたのだった。
不自然に発生した猛風に煽られ、ケンタは思わず手にしていた手榴弾を取り落としてしまった。
彼がこの風の原因を求め、眼前を凝視した先では――蒼い閃光に撃ち抜かれた尖兵が、次々と墜落していく光景が広がっている。
コスモソードのレーザー砲のようだが――その射角はかなり高い。自分はもちろん、近くを飛んでいるマイでもない。
遥か空高くから撃ち抜いたということか。そう結論づけたケンタが、青空を見上げた先では。
「……!? あの加速タイプは……!」
先ほどのレーザーを放ち、間一髪自分を救ったコスモソード。太陽を背にして、東京
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