番外編 残された姫君達
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ぜ』
「そんな! 十分も奴らを放っていたら、この東京の民は皆……!」
『だから俺達で始末をつけるんだ! いくぞ辻霧!』
「――はいッ!」
正規部隊がこの戦地に合流するまでには、まだ時間が掛かる。その時を待っていては何もかも手遅れになってしまうだろう。
この状況を打開するには、今すぐUIを叩き人民を避難させるしかない。二人はその一心で、カーキ色の機体を同時に下方へ滑らせる。
滑空するように地上へ近づく両機の目前で、UIの尖兵が建物を喰らい始める。
その中で、恐怖に慄くまま死を待つ、幼い子供を抱く母親の姿が目に入る瞬間――マイの心中に渦巻く「恐れ」が「怒り」へと変質し、彼女の精神を突き動かした。
「……消えろぉおぉおッ!」
激情のままに射撃レバーを倒し、主翼部に搭載されたレーザー砲が火を噴く。青白い閃光が雨となり閃き、尖兵の全身へと降り注いだ。
蜂の巣と化し、生命活動を停止したその個体は、力無く建物から剥がれ落ち。生き延びた親子は、互いの生存を確かめ合うように抱き合っている。
破損した建物を通り過ぎる瞬間に、その姿を目撃したマイは安堵するように息を吐く。無事にUIの尖兵を撃破出来たことではなく、あの親子が生き延びたことに、彼女は安心を覚えていた。
『ボサッとすんじゃねぇ死ぬぞ!』
「――ッ!」
だが、眼前に飛びかかってきた尖兵の鎌が、彼女の意識を一気に現実へ引き戻す。振り下ろされた刃がマイ機のコクピットに迫る瞬間――別方向から閃いた蒼いレーザーが、鎌もろとも尖兵を撃ち抜いた。
その向こうでは、ケンタ機が無数の尖兵を屠りながらこちらへ前進している。その圧倒的な立ち回りは、負傷により最前線を退いた男とは思えぬ奮戦ぶりであった。
「教官!」
『……とにかく持ち堪えろ! 格闘戦タイプの俺達じゃあ、大気圏外にいる「核」は叩けねぇ。加速タイプの到着まで、俺達で被害の拡大を食い止めるしかねぇんだ!』
「はいッ!」
彼が放つ気迫から、その実力の片鱗を感じ取ったマイは、息を飲み戦火へ飛び込んで行く。ケンタに続くように尖兵達に挑む彼女は、新兵特有の覚束なさはあったが――それを補うほどの天才的な技量で、尖兵の鎌をかわし続けていた。
(……やはり、あのガキは天才だな。並の新兵なら、もう三十回は死んでるところだ。場数さえ踏めば、俺はもちろん――あのラオフェン・ドラッフェにすら迫るパイロットになれる)
口にこそ出さないが。ケンタはすでに、この初陣で怒涛の戦果を挙げている彼女の力を、高く評価していた。
通常の新兵が遭遇すれば、十秒も持たず鎌に切り裂かれているこの戦況で、五分以上も戦い続けている。
大気圏外からこの尖兵達を操っている「核」を討たなくては永久に終わらない戦いだが、す
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